研究実績の概要 |
曲面Σの基本群πからリー群Gへの表現全体の空間Hom(π,G)には群Gが共役により作用する。この作用による幾何学的不変式論の意味での商空間Xを指標多様体という。この指標多様体を、表現の像が離散群になる部分とそうでない部分に分割すると、前者はΣのG構造の変形の空間とみなすことができる。特にGがSL(2,C)の場合は双曲幾何構造の変形空間であり、重要な研究対象である。特に離散部分群はクライン群とよばれ、重要な研究対象である。また、指標多様体には曲面Σの写像類群が自然に作用し、この作用の複雑さによっても指標多様体は2つに分割される。これら2つの関係は未解明な部分が多い。 今年度は、SL(2,C)の部分群で楕円型の元2つによって生成されるクライン群で、算術的とよばれる条件をみたすものの分類のための研究を継続した。楕円型の元はその位数で特徴づけることができるが、特に位数が6以下の場合において、どのような算術的クライン群が存在しうるかについて、計算機を用いた実験を継続した。クライン群は指標多様体のパラメータを用いて記述され、それが算術的になるためにはそのパラメータが代数的整数であって四元数代数等に関する一定の条件をみたす必要があることが知られている。さらに、指標多様体上の写像類群作用に関して、BowditchのQ条件というものをみたさなければならないことが予想されている。そのため、これらに関する計算機実験を様々なパラメータについて進めることで、算術的クライン群の完全分類に向けた候補を与えるための研究を進展させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでSL(2, C)の部分群で楕円型の元2つによって生成されるクライン群で、算術的と呼ばれる条件をみたすものの分類のための研究を行った。楕円型の元はその位数で特徴づけることができ、特に位数が2,3,4の場合の研究をこれまで行ってきたが、これを進めて5,6の場合において、どのような算術的クライン群が存在し得るかについて、計算機を用いた実験を進展させることができた。 クライン群は指標多様体においてトレースを用いたパラメータで記述され、それが算術的なものに対応するためには、そのパラメータが代数的整数であって、四元数代数等に関する一定の条件をみたす必要があることが知られている。さらに、指標体上の写像類群作用に関して、BowditchのQ条件とよばれるものをみたすことが予想されている。これらに関する計算機実験を、位数が5, 6の場合において進展させることができたため、研究は概ね順調に進呈していると考えている。
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