研究課題/領域番号 |
20K03614
|
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
作間 誠 大阪公立大学, 数学研究所, 特別研究員 (30178602)
|
研究分担者 |
古宇田 悠哉 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (20525167)
秋吉 宏尚 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80397611)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 2橋絡み目 / 放物的変換 / 非正曲率立方体分割 / 交代絡み目 / 3次元双曲多様体 |
研究実績の概要 |
(1)Agolが2001年にアナウンスした次の定理に完全な証明を与えた。「定理:双曲2橋絡み目群のメリディアン対が上方メリディアン対、下方メリディアン対どちらにも同値でないならば、それが生成する部分群は幾何学的有限な自由群である。」証明の鍵は、I. Aitchison, D. Thurston、横田佳之により構成されていた交代絡み目補空間の非正曲率立方体分割である。この立方体分割は、交代絡み目の2つのチェッカーボード曲面をハイパー曲面として含み、このことを用いると、双曲的交代絡み目のチェカーボード曲面は擬フックス群を定めることが示される。そのため、絡み目補空間の普遍被覆である3次元双曲空間へのチェカーボード曲面の持ち上げは3次元双曲空間の無限遠境界であるリーマン球面上の円周をその無限遠境界として定める。チェカーボード曲面が交代絡み目補空間の非正曲率立方体分割のハイパー曲面であることを用いて、このようにして登場する円周達の交差のパターンの情報が得られ、それを用いて与えられたメリディアン対の無限遠リーマン球面への作用を記述し、定理の条件を満たすメリディアン対が幾何学的有限な自由群であることを示すというのがAgolのアイデアである。このアイデアを実現する厳密な議論を与えたのが、今回の成果である。 (2)上述の結果を、完備双曲的3次元多様体の基本群Gの2つの放物的変換で生成される部分群Hに対するものに一般化し、次のいずれかが成立することを証明した。(a) Hは自由群(Gが幾何学的有限である場合は、H も幾何学的有限)。(b) G=Hは2橋絡み目絡み目群。(c) Hは2成分2橋絡み目群、Gは射影空間内の有理絡み目の補空間の基本群でHはGの指数2の部分群。 以上は坂井駿介との共同研究であり、研究成果を纏めた論文を執筆し、arXivに投稿後意見を待って、改訂版を専門誌に投稿した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
興味深いアイデアに基づいているが詳細が与えられていなかった2橋絡み目群の放物的部分群に関するAgolの議論にきちんとした説明を与えて細部まで議論を書き下し、加えて、その結果の一般化を与えることができたため、概ね順調に進んでいると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)今回完成した論文で与えた厳密な議論を出発点にして、チェッカーボード曲面から構成される3次元双曲空間の無限遠境界上の円周たちのワジ割のパターンの、さらに精密な解明に取り組む。 (2)交代絡み目の交代ダイアグラムのフライプを非正曲率立方体分割の観点から研究し、Tait フライプ予想への新しい視点を与える。 (3)2つの放物的変換で生成される群全体が作る空間の構造の研究を再開する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスのため予定していた出張および研究集会が中止あるいはオンライン開催になったため次年度使用額が生じた。今後の状況を見て,出張および研究集会の開催を検討する。
|