研究課題/領域番号 |
20K03616
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
庄田 敏宏 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (10432957)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Morse指数 / 退化次数 / 符号数 / 三重周期極小曲面 |
研究実績の概要 |
三重周期極小曲面は界面活性剤の数学的モデルであり,数学以外の分野で多く研究されている.古典的にはSchwarzによるPrimitive曲面,Didamond曲面が知られており,1970年代にSchoenによってGyroidと呼ばれている重要な曲面が発見された.その後,1990年代に物理学者が構成した,rG族およびtG族と呼ばれる,Gyroidを含むような三重周期極小曲面の変形族が知られていた.2020年度の研究内容はこれに関連したものである. 微分幾何学では,その曲面が面積最小の状態からどれだけ離れているかを表す幾何学的不変量である,Morse指数と退化次数と呼ばれているものが知られていた.一方,元名城大学の江尻典雄氏によって確立された理論で,これらよりも容易に計算できる,符号数と呼ばれる幾何学的不変量が知られている.本研究では,rG族およびtG族に対してこの三種類の幾何学的不変量を計算することが主な目的である. 実際,江尻典雄氏との共同研究にて,rG族およびtG族を定めるRiemann面に対して,その第二種微分(留数がないような有理型微分)の周期を計算し,線形代数的な行列の固有値を求めることによって,三種類の幾何学的不変量を数値計算を用いて特定した.それらをまとめた内容を国際的な査読誌である「Mathematics」に投稿し,掲載された.なお,これはOpen Accessの雑誌につき,世界中の誰もが閲覧できるものである.数学以外の研究者が興味をもち,それぞれの研究方針に応じて様々な方向に進展することを期待している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画していた通り,物理学者が構成した三重周期極小曲面の変形族である,rG族およびtG族の幾何学的不変量を特定することができ,その成果をまとめた内容を査読付きの国際誌に投稿し,掲載されていることがその根拠である.
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今後の研究の推進方策 |
現段階の研究成果は,三重周期極小曲面のうち種数が3のもののみを扱ってきた.これに対して,種数が高い場合の三重周期極小曲面の幾何学的不変量を考察するのが次なる目的となる.具体的には,1970年にSchoenが構成したI-Wp曲面と呼ばれている三重周期極小曲面の幾何学的不変量を特定することを目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で,計画していた国内出張および海外出張がすべてキャンセルになり,物品費のみの科研費使用となったことが,次年度使用額が生じた理由である. 次年度は,新型コロナが収束して出張できる状況であれば国内外の出張に,もし予断を許さない状況であれば,研究打合せ用のオンライン環境を整備するための費用およびその他の物品費に予算を割くというのが今後の使用計画である.
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