研究課題/領域番号 |
20K03617
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
國分 雅敏 東京電機大学, 工学部, 教授 (50287439)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 微分幾何 / 広義の正則性 / 解析的拡張 / 特異点 / 平均曲率 |
研究実績の概要 |
2022 年度においては,共著論文「Analytic extensions of constant mean curvature one geometric catenoids in de Sitter 3-space」が学術誌 Differential Geometry and Its Applications,Vol 84 (2022) への掲載に至った.本論文は,解析的完備性 (analytic completeness) や二重錐多様体 (double cone manifold) の概念を提唱した.その上で,解析的完備性をもつための条件を求め,その応用として,3次元ドゥジッター空間におけるある種の平均曲率1曲面に関する解析的完備性について研究結果をまとめたものである.3次元ドゥジッター空間においては,他の空間形の場合と比較して,多様な数理現象が見て取れる. また,3次元 Euclid 空間において,Gauss 曲率の等高線族が同心円状の族をなす曲面を発見し,それに関する研究結果をまとめた論文を投稿中である,審査を待っている状況にある.この論文で扱った曲面も特異点(曲面が定義されない部分)をもち,広義の正則性をもつと言える. 一方,幾何学分科会特別講演「Flat fronts in hyperbolic three-space and related topics」について,対面開催された日本数学会総合分科会(於北海道大学,2022年9月14日)において,講演の機会を設けていただき,発表することができた.これは,日本数学会本会 (於埼玉大学,2022年3月)の中止にともない,予稿集の提出をもって成立(日本数学会の HP 参照.)とされていたものだが,ここに報告しておく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に取り組んで3年目の年となったが論文執筆・出版することができた.出版された論文の研究対象には,広義の正則性をもつ曲面と呼べるものが含まれており,研究開始当初に想定していた対象のひとつと言えよう.部分的ではあるが,解明が期待された事柄が少しずつ得られている状態と言えよう.また,投稿中の共著論文・執筆中の共著論文がそれぞれ1つずつある状態であり,継続的な取り組みができている.これらの理由から研究はおおむね順調に取り組めていると自己評価する. 一方,過年度において,新型コロナに対する感染予防対策等の理由で,研究打合せや学会出張等が制限されてしまったこともあり,当初の研究計画を後ろ倒しに進めている面もあることを付記しておきたい.
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今後の研究の推進方策 |
まず研究に対するエフォートをコロナ以前の水準に戻した上で,バイアウト制度の活用なども視野に入れ,研究に取り組める時間の確保に努めたい.他の研究者とのディスカッションや共同研究は,対面型を原則とすることに戻すが,オンラインの活用など,新たに得たノウハウも取り入れ,効率的な取り組みも行いたい.その上で次の3つのテーマに取り組むことを重点としたい. (1)一般的な仮定の下で,解析的曲面の解析的完備性(解析的極大性)について研究を進める.ここで述べた一般的仮定とは,定曲率計量の入った多様体に限らず,より一般の実解析多様体及びそれを一般化したものである. (2)3次元 Euclid 空間において,Gauss 曲率の等高線族が同心円状の族をなす曲面の中で,唯一発見できている例の族について,その特徴づけを与えることができているが,改良の余地があるのではないかと推測している.その解明に取り組む. (3)曲率一定の曲面に限らず,広義の正則曲面と呼べる対象が存在する可能性がある.これに関して,探査的研究を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題の研究期間は令和2~4年度の3年間を予定していたが,コロナ禍の中,学会や研究集会などの中止や延期等があった,また,オンライン授業の教材準備などに多大な時間を要し,研究に対するエフォートの割合が低くなっていた.以上の理由により計画が遅れることとなった.研究期間の延長が承認されたため,引き続き今年度も課題に取り組むことができることとなった.今年度は,PC の購入,研究資料の購入,学会や研究集会への出張旅費に予算を執行する予定である.また,バイアウト制度利用の可能性も選択肢の一つと考える.
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