研究課題/領域番号 |
20K03617
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
國分 雅敏 東京電機大学, 工学部, 教授 (50287439)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 微分幾何 / 広義の正則性 / 解析的拡張 / 特異点 / 曲率 |
研究実績の概要 |
2023 年度に取り組んだ研究は,主に次の2つのテーマであった.(1)(特異点を許容する)曲面や部分多様体の解析的拡張に関する研究 (2)3次元 Euclid 空間において,Gauss 曲率の等高線族が同心円状の族をなす曲面および平行直線族をなす曲面の研究. (1) について:当初想定していた研究対象よりも広い対象で研究すべきことに気がつき,これまでの研究成果の再構築の必要に迫られるなど一進一退の状況となった.より具体的に述べると,研究対象が解析的であるにも関わらず,その構造を一旦忘れた上で位相構造のみに立脚した理論の構築が必要であることに気づき,弱い仮定・前提からやり直すこととなった.このテーマについては,共同研究に負う部分が多く,共同研究者らとの研究討議を多く実施した. (2) について:この研究で扱った曲面も特異点(曲面が定義されない部分)をもつ場合があり,広義の正則性を有するものが現れる.具体例の構成に留まらず,面積要素の対称性を仮定に置くなどして,やや弱い結果となるが,ある曲面族の特徴づけを示すことができた.その他いくつかの結果を含めて論文にまとめ,幾何学関連の学術雑誌に投稿中であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題に取り組んで4年目の年であったが,上でも述べたようにテーマ (1) については一進一退の状況であった.また,2023 年度はテーマ(1), (2) のほかにもう一つ「曲率一定の曲面に限らない広義の正則曲面の探査的研究」を研究テーマに掲げていたが,そこまで手が回らなかった.以上の理由で,自己評価は低めとする. しかし,テーマ (2) に関する研究をまとめた論文は 2024年5月5日にJornal of Geometry から出版され,本報告書執筆時点では出版済である.出版された論文の研究対象には,広義の正則性をもつ曲面と呼べるものが含まれており,研究開始当初に想定していた対象のひとつと言えよう.部分的ではあるが,解明が期待された事柄が少しずつ得られている状態と言えよう. また,執筆中の共著論文がある状態であり,継続的な取り組みができている.これらの理由から低評価の中にも好材料も見られる状況にあると言えよう.
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今後の研究の推進方策 |
他の研究者とのディスカッションや共同研究は,対面型を原則とすることに戻したが,オンラインの活用など,新たに得たノウハウも取り入れ,効率的な取り組みを行いたい.その上で次の3テーマの取り組みの継続を重点としたい. (1)一般的な仮定の下で,解析的曲面の解析的完備性(解析的極大性)について研究を進める.ここで述べた一般的仮定とは,定曲率計量の入った多様体に限らず,より一般の実解析多様体及びそれを一般化したものである. (2)3次元 Euclid 空間において,Gauss 曲率の等高線族が同心円状の族をなす曲面の中で,唯一発見できている例の族について,その特徴づけを与えることができているが,改良の余地があるのではないかと推測している.その解明に取り組む.とくに,射影幾何との関連を調べたい. (3)曲率一定の曲面に限らず,広義の正則曲面と呼べる対象が存在する可能性がある.これに関して,探査的研究を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題の研究期間は当初は令和2~4年度の3年間を予定していた.コロナ禍の中,学会や研究集会などの中止や延期等があり,また,オンライン授業の教材準備などに多大な時間を要するなど,研究に対するエフォートの割合が低くなっていた.以上の理由により計画が遅れることとなった.令和5年度は研究期間の延長が認められたため,引き続き課題に取り組んだ.しかしながら,上記と同じ理由により,研究の進展の遅れを取り戻すまでに至らなかった.再度の延長を申請し承認されたため,引き続き今年度も課題に取り組むことができることとなった.今年度は,研究資料の購入,学会や研究集会への出張旅費に予算を執行する予定である.
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