研究実績の概要 |
足立真訓氏(静岡大学),松田能文氏(青山学院大学)と共同で,ポアンカレ円板の計量同型群PSU(1,1)の一般の格子について,その円周への群作用の剛性を懸垂束の調和測度を用いて調べる研究を継続した.前年度までに得られていた剛性定理について,証明にギャップが見つかったため,新たな議論を用いて証明を行った.前年度までの研究と合わせ,PSU(1,1)の格子の円周への作用について,その懸垂葉層の調和測度の剛性的性質と,作用自体の剛性であるミルナー・ウッドの不等式および松元の極大な作用の半共役剛性定理との関わりを明らかにできた.他の空間や,他の関連する問題への調和測度の応用の可能性を視野に入れうる結果であると考えられる. ヘスュス=アルバレス=ロペス氏(サンティアゴ・デ・コンポステラ大学),ラモン=バラル=リホ氏(マドリッド工科大学),ジョン=ハントン氏(ダラム大学),ジョン=パーカー氏(ダラム大学)と非コンパクト型対称空間内のデローネ集合(一様に広がった点集合)の研究を行い,ユークリッド空間の場合のよく知られた切断射影法の一般化により,ある半単純リー群の数論的な格子を切断し部分リー群に射影することで,新たなデローネ集合の例を構成した.前年度までのポアンカレ円板への切断射影法の一般化と合わせ,興味深い準周期性を持つ新しい点集合の例を構成できた. 山口夏穂里氏(立命館大学)との共同研究により,n回コイン投げを行う場合の統計モデルについて,様々な統計量の例について考察し,特に値が2値になるものについて,いつ誘導モデルのフィッシャー計量が元のモデルのフィッシャー計量とリプシッツ同値になるかどうか,分布関数を用いて特徴づけた.前年度までの研究結果である,そういった定量的に弱い十分性を持つ統計量の分布関数による特徴づけと合わせ,必ずしも十分でない統計量の定量的な理解を深めることができた.
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