研究実績の概要 |
本研究の目的は対称空間に関する以下の二つのトピックについて、有限グラフを通じて理解することである。(A)対称R空間M上の大対蹠集合Sから自然に得られる有限グラフΓについてMの不変量とΓの不変量の関係性を見出す: (B)非コンパクト型エルミート対称空間Mにおける等質ラグランジュ部分多様体Lの構成・分類問題を根付き木Tを用いて行う。この(A)(B)のそれぞれについて今年度の研究成果を以下で述べる。 (A)本年度はユニタリ群U(n)に関して大対蹠集合のグラフ的性質に注力して研究をおこなった。U(n)を対称空間としてみるとき、適切なU(n)不変計量を選べば対称R空間になる。U(n)が対称R空間になる計量に対しては、大対蹠集合上のグラフ構造はハミンググラフと呼ばれるとても性質のよいグラフになることを証明した。一方でU(n)が対称R空間にならない計量に対しては、大対蹠集合のグラフが非連結で自明なものになってしまう例が存在することもわかった。この結果はU(n)上のU(n)不変計量の中で特別なものの特徴づけをグラフ理論の言葉で翻訳できたことを意味する。今後は一般の対称R空間に対して対称R空間になる計量とグラフの関係を調べていく。 (B)昨年度にひきつづきM=Sp(n,R)/U(n)の場合に、等質ラグランジュ部分多様体Lの構成・分類問題を考えた。昨年度、Sp(2,R)/U(2)の場合に、根付き木の言葉で翻訳できないLを構成したので、今年度はSp(n,R)/U(n)の場合にそのようなLを追求した。するとSp(n-1,R)/U(n-1)のLから帰納的にSp(n,R)/U(n)の等質ラグランジュ部分多様体が作れそうな例をいくつか発見した。したがって今後はこの例をもとにnが小さいところから帰納的に一般のnに対して等質ラグランジュ部分多様体を構成するアルゴリズムを構築していく。
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