研究課題/領域番号 |
20K03624
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
平澤 剛 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (10434002)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 半閉部分空間 / 不変部分空間 |
研究実績の概要 |
本研究課題の背景は、可分Hilbert空間上の任意の有界線形作用素は非自明で不変な閉部分空間を常に有するか、所謂、不変部分空間問題にある。任意の有界線形作用素には不変な半閉部分空間がたくさんあるわけだが、それらの中に閉部分空間の存在が示されれば肯定的に解決されることになる。本研究の最大の目標は存在を示すことにある。 令和2年度の研究実施計画としては、Uhlmannの補間的作用素幾何平均による半閉部分空間のpathを用いて、単調減少区間列の構成を行っていく過程で現れる課題考察である。すなわち、1つの区間から次の区間を帰納的に構成していくとき、区間の両端点を結ぶpath上から次の区間の両端点をいかにして決定していくのか、についての1つのアイデアの是非の検証。以下、その実績報告である。アイデアの検証に現れることがらはそれぞれ独立しているわけではなく、相互的に調整・考察することが求められる困難さがあるため、打破するための有効な道具を得るために関連がありそうな論文を調査した。特に、complimentabilityの一般化に関連した論文を読むことに相当程度時間を費やすことになった。その結果、閉部分空間に関するweakly-, quasi-complimentability等の概念が、半閉部分空間や半閉作用素の周辺分野とも関係していること、すなわち、半閉な射影作用素やSchur complimentと深い関連性があるという知見を得ることができた。これまでの不変な半閉部分空間の区間縮小法的な考察では、区間列の極限として不変な閉部分空間を得る算段であるが、このことはある種の半閉な射影作用素の集合から閉な射影作用素を選び出すことと同等であることが上述の知見により予想される。このことにより、不変部分空間問題に対する新たな視点の問題意識を取り入れることができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れている要因の一つは、研究課題の難しさにもあるが、それに加えて新型コロナ感染状況に伴って研究へのエフォートがかなり削られたことである。特に1年を通して遠隔授業準備に相当時間強いられたことで、研究時間がほとんど取れずに進捗予定がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、初年度に確保できなかった研究エフォートを確保することが第一である。さらに、研究をより効率的に行っていくために、テレワークの際の研究環境の改善、文献管理ソフトの活用、論文の英語翻訳ソフトの活用などを行いつつ研究を行っていくことが第二である。限られた時間での効率化を図りつつ、研究を推進していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染状況により、出張ができる状況ではなくなり、さらには、学会や研究集会などはすべてオンライン開催になったため、使用する予定だった旅費が余ったためである。その使用計画としては、オンライン研究集会での研究発表やオンラインで他の研究者との情報交換を行う際の電子機器類の環境充実のために充当予定である。さらには、効率的に研究を推進するための環境改善(文献管理ソフト等)にも使用する予定である。
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