研究課題/領域番号 |
20K03625
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
高江洲 俊光 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (10614042)
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研究分担者 |
石田 敦英 東京理科大学, 工学部教養, 講師 (30706817)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒルベルト空間論 / 相対論的場の量子論 / 基底状態エネルギー / 摂動展開 / スペクトル解析 / 自己共役作用素 |
研究実績の概要 |
φ4乗モデルの基底状態エネルギーの摂動展開について(T.Takaesu, The first order expansion of a ground state energy of theφ4 model with cutoffs, J.Math.Phys. 62, 042302 (2021)) [研究内容] 空間・運動量切断が加わったφ4乗モデルの基底状態エネルギーについて考察した。φ4乗モデルはスカラー場が4次の相互作用する相対論的場の量子論の系であり、構成的場の量子論の研究の初期から研究されてきた系である。系の全ハミルトニアンは空間・運動量正則条件の下で、二乗可積分の空間の無限直和のヒルベルト空間であるボソンフォック空間上の下に有界な自己共役作用素となっている。場の量子論の系では場の質量がある場合はmassive, ゼロの場合はmasslessとよばれる質量パラメータmが加わっている。主定理においてmassiveおよびmasslessの場合でも、縮退していない基底状態エネルギーは、赤外正則条件に対応する条件の下で相互作用の係数κに関して1次の摂動展開が可能であることを示した。証明の大きな方針としては、Arai の asymptotic perturbation theory (A.Arai, Ann. Henri. Poincare 15, 1145-1170(2014))を応用した。φ4乗モデルの作用素論的な特徴のひとつとして相互作用が特異である、すなわち摂動がfreeハミルトニアンに対して相対有界となっていないことがあげられる。また、masslessな場合はfreeハミルトニアンの基底状態エネルギーは連続スペクトルに埋め込まれた埋蔵固有値となっている。このように摂動が特異であり、特に埋蔵固有値となっている場合にも摂動展開できるということに本研究の重要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、空間・運動量切断が加わったφ4乗モデルの基底状態エネルギーの一次の摂動展開が可能である結果について論文としてまとめ、国際学術誌に投稿し、その後受理され出版された。また今後の研究推進方策に記載の場の量子論の系の基底状態エネルギーに関する改良・発展させていくべきことについても気づくことができた。
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今後の研究の推進方策 |
φ4乗モデルの基底状態エネルギーの一次の摂動展開に関する研究としては、以下のように推進していきたい。 (1)今回、応用した一般論は前述の Arai の asymptotic perturbation theory (A.Arai, Ann. Henri. Poincare 15, 1145-1170(2014))であるが、その一般論自体に、改良・発展させたい多くの箇所について今回の研究を通して気づくことができ、それらのことについて研究を進めていきたい。 (2)Dirac場と量子場が相互作用する系である相対論的量子電磁力学の系といった量子場と量子場が相互作用する系の基底状態エネルギーも摂動展開可能であるか進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はcovid-19の影響のため、旅費の予定だった経費が多く残った。2021年度は出張が可能なら旅費の費用、もしくは図書の購入などにあてる予定である。
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