研究課題/領域番号 |
20K03626
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
今村 卓史 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (70538280)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | KPZクラス / 可積分系 / 確率過程 / 量子群 / クリスタル |
研究実績の概要 |
可積分確率論(integrable probability)において重要な役割を果たしているq-Whittaker測度に現れる行列式構造に関する研究を行い2つのプレプリント:arXiv:arXiv:2106.11913, arXiv:arXiv:2106.11922をarXivに投稿した.q-Whittaker測度は分割μ上の確率測度であるが,その第一成分μ_1の周辺分布が,周期的Schur測度と呼ばれる確率測度で生成される分割の第一成分λ_1およびそれと独立なある確率変数χとの和すなわちλ_1+χの分布と等しいことを明らかにした. q-Whittaker測度,特にその第一成分μ_1はq変形された排他過程,ランダム媒質中の有限温度directedポリマー等のKardar-Parisi-Zhangクラスに属する確率モデルの揺らぎを記述していることが知られているが,その解析はBethe仮説等の量子可積分系の手法を用いた複雑なものであった.他方周期的Schur測度は,ある確率変数を加えたものが行列式点過程で記述されることが知られていて,その数理構造は明快であり解析がしやすいモデルである.また有限温度自由フェルミオンとの関連も最近明らかになり注目されている. 本研究によってq-Whittaker測度という確率論,統計物理学の観点から興味深いが解析が難しいモデルを,周期的Schur測度という行列式構造あるいは自由フェルミオンの構造のある解析しやすいモデルを使って研究できることが明らかになった.さらにこれまで知られていたq-Whittaker測度における行列式公式の由来は,周期的Schur測度における行列式構造であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KPZモデルにおける行列式構造の理解,特にq-Whittaker測度と周期的Schur測度との関係の理解はここ数年の大きな目標であったが,論文という方にまとめることができたため.また本研究は可積分確率論の新たな手法の一つになる可能性を秘めているため.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は可積分確率論の従来の手法とは異なる新たなアプローチである.今後はこのアプローチの理解を深めることおよびこれを実際のKPZモデルに適用し,従来の手法では解析が困難であった,半無限系KPZモデルの解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は,新型コロナウィルスのため研究集会がオンラインにあり,旅費等を使用することがなった.2022年度はオンライン会議等のための機材やソフトウェ アの購入を行う.また研究集会等が再開された際は旅費等にも使う予定である.
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