研究課題/領域番号 |
20K03627
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
謝 賓 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (50510038)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 保存系 / 良設定問題 / 後退確率微分方程式 / 特異係数 / 輸送型ノイズ / 特異型 / 定量的 |
研究実績の概要 |
本年度では,保存系の確率偏微分方程式の解に確率的性質,非線形確率偏微分方程式の解の長時間のふるまい,臨界条件を満たす後退確率微分方程式の良設定問題等の研究に取り組んだ. 質量保存の法則にしたがう乗法的ノイズが加えられた確率偏微分方程式に対して,特異な係数を持つ場合の良設定問題等を調べた.このような確率微分方程式はさまざまな分野に応用されている.良設定問題に関する研究を行うためにノイズの構成に工夫した.また,昨年度に引き続きエルゴード性に関わる解の絶対連続やFreidlin-Wentzell型大偏差原理等の研究に取り組んできた.さらに,特異型の確率Cahn-Hilliard 方程の解の構成にも力を入れた.しかし,予測した結論に至らなかったので,引き続き研究する予定である. 非線形確率偏微分方程式の解の長時間のふるまいに関する研究を行った.適切な条件の下で,輸送型ノイズが加わった2次元非線形確率偏微分方程式が決定的な偏微分方程式への定量的な収束率を調べることをし,確率解析的観点より部分的な研究成果をあげた. ある種の臨界条件の下で,後退確率微分方程式についての良設定問題の研究を行い,解の存在,一意性を中心に調べた.後退確率微分方程式は数学をはじめ,数理ファイナンス,物理学等に幅広く用いられている.本研究課題に取り組む際,確率偏微分方程式への応用を念頭に置き,終端値に積分可能性の意味で臨界条件を課すことで,後退確率微分方程式の解の存在と一意性が成り立つことを示した.また,このような後退確率微分方程式が確率偏微分方程式にどのように応用できるかを調べ始めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は,引き続き一般された確率Cahn-Hilliard方程式についてのエルゴード性,解の絶対連続性や,特性係数と乗法的ホワイトノイズを持つ保存系の確率偏微分方程式の良設定問題を考えた上,特異型の保存系の確率偏微分方程式の解の構成を考察した.また,非線形確率偏微分方程式の解のふるまいおよび後退確率微分方程式についての研究も進めた.これらの研究により,今年度も研究を進めることができた.一方,本研究課題の重要なテーマである保存系の確率偏微分方程式についての大偏差原理の研究と特異型の確率偏微分方程式の研究は進展したものの,部分的な成果を得るにとどまってしまった.そのため,総合して「やや遅れている」とした.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究状況に基づき,質量保存の法則にしたがう確率偏微分方程式に関する大偏差原理等の研究を優先的に進める予定である.また,来年度は確率偏微分方程式に関する最新の動向に注目し,保存則系の確率微分方程式や輸送型ノイズが加わった2次元非線形確率偏微分方程式についての研究も積極的に取り組む予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響による規制は緩和されてきたため,延期された国内外の研究集会等に出席し,研究成果発表や研究情報収集を行ったが,新型コロナウイルス感染症の規制期間中に研究集会が中止された等の影響で,次年度使用額が生じた.一層の活発な研究を行うために,情報収集,研究連絡,研究集会での研究発表等の出張旅費,確率解析の専門家への招聘等の旅費に充てる予定である.
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