研究実績の概要 |
2023年度は対相互作用模型の基底状態エネルギーおよび基底状態の解析性の研究を進展させた。対相互作用模型はBogoliubov変換によって対角化されることが, [MSU] Matsuzawa, Y., Sasaki, I. & Usami, K. Explicit diagonalization of pair interaction models. Anal. Math. Phys. 11, 48 (2021) によって示されていた。これによって抽象的な2次の相互作用を含む模型が,具体的なユニタリ変換によってある1粒子作用素の第2量子化作用素の形に変換できる。したがって,その基底状態エネルギーや基底状態の形をある解析可能な形に特定することができる。 そこで,次に問題となるのは,その基底状態エネルギーや基底状態を計算することができるのかということである。物理学においては摂動法という級数展開法によって様々な物理量の期待値が計算されるが,その級数の収束については通常議論されないし,摂動級数の一般項を書き下して級数の収束を示すことは容易なことではない。我々は,この問題に取り組み,基底状態エネルギーや基底状態の解析性を示すことに概ね成功した。具体的には,結合定数を複素領域に拡張し,m-accretive, m-sectorialといった作用素を考え解析することとなったが,具体的な級数展開はせずに複素領域における正則性を示すことで解析性を証明した。ここで作られた(おそらく)新しい数学的な技術は,m-accretive作用素に対するHeinzの不等式である。この研究成果については現在論文執筆中である。
|