研究課題/領域番号 |
20K03629
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上木 直昌 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80211069)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 確率解析 / 微分方程式 / 作用素論 / 数理物理 / ランダムシュレディンガー作用素 / スペクトル / 磁場 / Anderson 局在 |
研究実績の概要 |
本研究はランダムなシュレディンガー作用素に関する問題に多角的に取り組むことを目的としている。 Gauss 型ランダム磁場をもつランダムシュレディンガー作用素に対して、配位空間が2次元でスピン1/2の場合、即ちディラック作用素に対して、Wegner 型評価を得て Anderson局在を証明することに関して一連の結果を論文にまとめて、学術雑誌に投稿したが、現在審査結果を待っている。スピン0の場合については本研究代表者が以前同様の結果をまとめて論文に発表しているが、その際に用いた磁場となる確率場の正値性は証明が難しく、配位空間が3次元以上の場合への拡張に対する障壁になっていた。この確率場の正値性を用いずに結果が得られたことがスピン1/2の場合の特徴である。しかし配位空間が3次元以上の場合への拡張は波動関数の値の次元が増えてしまうことによる困難があり、依然として克服に至っていない。 ポテンシャルがホワイトノイズになっている場合のランダムシュレディンガー作用素の研究について、最近のパラコントロールカリキュラスによる研究の発展がなされていたので、今後の研究のための参考とした。 相互作用がある点過程に対するシュレディンガー作用素の状態密度関数の挙動について、ポアソン点過程を変形させたギブス点過程に対して、大学院生の中川雄太氏が取り組み、修士論文にまとめた。まずポテンシャルが正の場合、相互作用に一定の弱さに関する条件を課せば、状態密度関数の低エネルギーでの減衰のオーダーは元のポアソン過程のものと同じであることを示したが、主要項の決定には至っていない。次にポテンシャルが負の場合、状態密度関数の低エネルギーでの減衰の主要項は、一定のまとまった条件の下で元のポアソン過程のものと同じだが、特定の条件の下では、オーダーも含めて元のポアソン過程のものと異なることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Gauss 型ランダム磁場をもつランダムシュレディンガー作用素に対する Wegner 型評価と Anderson 局在の研究について、スピン1/2の場合に進歩があったが、3次元以上に拡張するには至らなかった。ポテンシャルがホワイトノイズになっている場合のランダムシュレディンガー作用素の研究についてかなり理解が進んだが、一定の成果には至らなかった。本年度は研究情報の交換に関しても、多くの学会や研究会が開催されなかったり、オンラインでしか開催されなくなったりしたので、例年より出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
ランダムな磁場をもつシュレディンガー作用素に対する Wegner 型評価と Anderson 局在に関して配位空間が2次元でスピン1/2の場合には成果を発表したい。 ポテンシャルがホワイトノイズになっている場合のランダムシュレディンガー作用素の研究について、一定の成果にまで達したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年末に予定されていた学会がオンライン開催になった。次回学会は遠方(北海道)で開催されるので資金を用意しておいた方がよい。
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