研究課題/領域番号 |
20K03632
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
堀田 一敬 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (10725237)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レヴナー方程式 / 非可換確率論 / evolution family |
研究実績の概要 |
本年度は以下のような研究を行い,成果を得た. 1.確率測度の無限分解可能性は極限定理との関連から非常に重要な研究対象である.本年は自由独立性に無限分解可能性の概念を一般化し,自由「擬」無限分解可能測度を新たに導入しその基本性質を調査した.先行研究ではテンソル独立性における擬無限分解可能性は調査されており,本研究はそれに続く研究と言える.本研究での成果は論文としてまとめられ,現在数学の国際専門誌に投稿中である. 2.Loewner理論において用いられるreverse evolution familyと非可換確率論における独立増分過程との間には,近年密接な関係があることが明らかになった.この中で時間パラメータに関して連続性のみ仮定する新たなreverse evolution familyが用いられた.そこで本研究ではreverse evolution familyのパラメータに関する連続性の条件を幾何学的函数論の観点から考察し,パラメータの連続性と同値となるような条件を調べ上げた.具体的には,reverse evolution familyは2つの時間パラメータ(s,t)に依存する等角写像族である.非可換確率論においては(s,t)の2変数に関する連続性が仮定されたが,これが一方のtに関する連続性のみで定義可能であることを証明した.一方でsに関する連続性では不十分で,いくつかの仮定を追加しなければならない事がわかった.本研究での成果は現在論文としてまとめられ投稿準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れている理由としては,昨年度に引き続きコロナウイルスによる影響から研究活動をする時間の確保が難しく,特に海外の研究者たちとの研究交流が円滑に行えなかった事が挙げられる.一方で国内における研究活動は徐々に軌道に乗っており,引き続き国内の研究者との交流を進めていきたいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は次のような課題の解決に取り組んでいく. 1.単位円板におけるradial decreasing Loewner chainと古典独立における単位円周上の独立増分過程との関係性は示すことができたので,次は上半平面におけるchordal decreasing Loewner chainと実軸上の独立増分過程との1対1対応を示していきたい.本研究は昨年度から少しずつ進んでいるので,本年度は論文の執筆を目指したい. 2.ブール独立性における独立増分過程と正則関数族との関係を調べていく.これはBlaschke積がキーワードとなる事が予想されており,昨年度は同概念を中心としたHardy空間論の勉強に多くを費やした.それらをもとに今年度は具体的にどのように函数論側からアプローチできるのか考察していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のようにコロナウイルスによる影響で未だ多くの研究計画に遅れが生じている.当初の計画ならば2022年度にLoewner理論の国際研究集会を主催し多くの海外研究者を招聘するはずだったが,依然として海外渡航には大きな制約があり実現は難しいものと思われる.一方で国内研究者との共同研究は当初の予定より順調で少しずつ軌道に乗り始めているおり,今後はより国内研究活動に力を入れていきたい.
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