研究課題/領域番号 |
20K03634
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
濱名 裕治 筑波大学, 数理物質系, 教授 (00243923)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | Ornstein-Uhlenbeck 過程 / Wiener sausage / 到達時刻 / エントロピー関数 |
研究実績の概要 |
ブラウン運動に対する Wiener sausage の体積の研究のために必要なベッセル過程の到達時刻についての研究を行い,熊本大学の大学院生と共同で末尾確率の漸近展開を得ることができた.基本的な手法は第2種ベッセル関数の比で表されているラプラス変換を初等的な形に変形し,その逆変換を求めることであるが,今まで知られていた表示では漸近展開に困難が生じることがわかっている.そこでラプラス変換をベッセル関数の汎関数として表示し,その漸近展開を用いることで,もとの末尾確率の挙動を調べ,結果を得るに至った.得られた成果を公表すべく論文の執筆を開始した.近日中に学術雑誌に投稿する予定である. また,オルンスタイン・ウーレンベック過程に対する Wiener sausage の体積の期待値を求めるために,拡散係数が時間に依存するブラウン運動の到達時刻を詳しく調べることが必要となった.これに関しては成果を得るには至らなかった.ブラウン運動ではない確率過程に対する Wiener sausage の体積に関しては先行結果が非常に乏しく,手さぐり状態で研究を行っていたが,最近,楕円型偏微分作用素を生成作用素にもつ確率過程に対する Wiener sausage の体積の研究を行っている論文を入手することができた.オルンスタイン・ウーレンベック過程の生成作用素は楕円型であるが,ドリフト項に特異点があるので,どこまで適用できるかを注意深く検討する必要性があるが,その論文の内容の把握と結果の分析,および用いられている手法の解析など,研究の出発段階にまでたどり着くに至った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
オルンスタイン・ウーレンベック過程は空間的に平行移動不変ではないので,Wiener sausage の体積については,ブラウン運動の場合に用いられた,1次元拡散過程に帰着する手法では解決できない.そのため,原点から出発するオルンスタイン・ウーレンベック過程が中心が原点でない球へ初めて到達する時刻の詳しい情報が必要となる.そのためは多次元拡散過程の球面への到達時刻の解析が重要であるが,現段階においては先行結果が乏しいため解決の糸口を見つけることが困難であった. また,Wiener sausage の体積のエントロピー関数については,上からの評価が得られているが下からの評価が得られず,有効な方法がみつけられないでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
楕円型偏微分作用素を生成作用素にもつ拡散過程に対する Wiener sausage の相席に関する論文を見つけることができた.この論文の内容を理解することで,オルンスタイン・ウーレンベック過程に対する Wiener sausage の体積に対して応用することができるものと考えている. Wiener sausage の体積のエントロピー関数については,以前探し当てた文献を深く読み込み応用の可否を検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナ感染対策のため研究集会がすべてキャンセルとなり,また,都府県境を超える移動を抑制されていたため研究打ち合わせの出張の中止も余儀なくされた.さらに,移動を極力控えることを要請され長期間の在宅勤務を行わざるを得なかったことと,オンライン講義の準備等に膨大な時間を割くことになったため満足いく研究環境ではなかったため書籍等の購入も控えることにした.次年度はオンライン授業ではなく研究時間を確保できるため書籍購入を積極的におこなう.ワクチン接種により新型コロナが終息することが期待できるので,その後は,東北大学,九州大学,関西大学,青山学院大学などの関連する研究者との研究打ち合わせなどを再開する予定である.
|