研究課題/領域番号 |
20K03635
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
金 大弘 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (50336202)
|
研究分担者 |
桑江 一洋 福岡大学, 理学部, 教授 (80243814)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | シュレディンガー形式 / 散乱長 / 準古典極限問題 / 一般化ファインマン・カッツ汎関数 / ランダム環境内の拡散過程 |
研究実績の概要 |
一般化ファインマン・カッツ汎関数に付随されるシュレーディンガー作用素の臨界性とその周辺問題について、シュレディンガー形式論という関数解析的取り組みを確立する研究を行うとともに、その確率論的応用について考えた。
(1) 飛躍型加法汎関数に対する散乱長の概念を拡張し、それに関連する散乱長の準古典漸近問題を確率論的手法により拡張した。研究成果は数学雑誌 Statistics and Probability Letters に掲載された。 (2) 直積ディリクレ形式の理論を応用することで、多次元 Broxの拡散過程と1次元ブラウン運動の直積過程の再帰性に関する新しい結果を得た。研究成果は数学雑誌 Electronic Journal of Probabilityに掲載された。 (3) 一般化ファインマン・カッツ汎関数に付随されるシュレーディンガー作用素の臨界性理論を確立するとともに、いくつかの最大値原理についての結果を得た。研究成果は数学雑誌 Osaka Journal of Mathematicsに掲載予定。 (4) 一般化されたファインマン・カッツ汎関数のゲージ理論を利用してシュレディンガー作用素の熱核の安定性における最も一般的な枠組みでの判定条件、並びに同値条件などを究明した。研究成果は現在審査中。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ディリクレ形式論やシュレディンガー形式論といった関数解析的取り組みを駆使し、これまでの研究成果を土台にして進行させた関連周辺問題に関する一連の研究は、一般化された非局所型ファインマン・カッツ汎関数の重みをもつ対称マルコフ過程が示す特異的な性質の確率論的理解を明確にしたと考えられる。以上のことで、一般化ファインマン・カッツ汎関数を重みとしてもつ確率過程に対する新しくより見通しの良い解析学的理論展開を構築する当初の研究目標は一定部分達成できたように思える。特に、一般化ファインマン・カッツ汎関数に付随されるシュレーディンガー作用素の臨界性理論が確立でき、様々な古典的最大値原理との関係が分かってきたことは、これからの関連問題を取り組む際の新しい突破口となるのではと思う。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を土台にして、一般化シュレディンガー作用素における様々な解析とその結果がもたらす確率論的立場からの意味について注意深く研究を進行していきたい。特に、以下に示す問題を明らかに究明したいと考えている。 (1) シュレディンガー形式の臨界性とハーディー型不等式についての考察。 (2) 正値加法汎関数に対する散乱長とディリクレ形式からなるその変分表現。 (3) 多次元ランダム環境をもつ直積確率過程における大域的性質として、臨界的な場合である多次元Broxの拡散過程と2次元ブラウン運動の直積過程についての考察。
なお、これらの問題については既に一部分結果を得ている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、国内はもちろん国外においてもコロナ拡大防止の一環として、予定されていたすべての学会と研究集会および研究打ち合わせなどが中止または延期となった。そのようなことにより、予定していた旅費や研究経費の支出が計画通りにいかなくなる予想外のことが起きったことが次年度使用額が生じた理由である。コロナ拡散の状況次第ではあるが、次年度はできるだけ予定されている学会や研究集会および研究打ち合わせなどを当初の計画通りに行う方針を立てており、私もそのことに従って慎重に研究を計画通りに進める予定である。
|