本研究では、様々な重み付きマルコフ過程をめぐる確率論的諸問題およびその応用分野に関して、シュレディンガー形式論やシュレディンガー作用素の確率的散乱理論を駆使した新しくより見通しの良い関数解析学的理論の構築を行った。特に、一般化されたファインマン・カッツ重みをもつマルコフ過程の半群に対応するシュレディンガー作用素の各臨界性に対する解析的特徴付けを定式化した。この結果により、ディリクレ形式の大域的性質とシュレディンガー作用素の臨界性理論との繋がりを明確にすることができた。古典的な散乱理論で現れる重要な物理量であるシュレディンガー作用素の散乱振幅や散乱長などの概念はポテンシャル関数により定義されるゲージ関数と深い関係があることがよく知られている。本研究では、特にファインマン・カッツ汎関数をポテンシャルとしてもつ分数ベキシュレディンガー作用素において、既存の局所型ポテンシャルにおけるカッツの散乱長公式を非局所な場合を含む形で一般化することができた。また、その応用として、分数ベキシュレディンガー作用素が離散スペクトルをもつための解析的特徴付けを与える問題にも取り組んだ。これらは、2021年度日本数学会秋季総合分科会・統計科学分科会における特別講演枠としてその研究成果の内容を紹介することができた。さらに本研究では、特異的なランダム拡散係数をもつ多次元拡散過程の大域的性質についても一定の成果を挙げることができた。
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