研究実績の概要 |
昨年度に引き続き, 完全WKB解析を展開するために, large parameterを持つ野海・山田方程式系(NY)m(m=2,3,4,....)のインスタントン解の構成法について研究した. 昨年度までは, (NY)mの解の基底を記述すると予想される因子を発見し, 附随する代数構造を見出すところまでは進んでいたが,多重スケール解析によるインスタントン解の構成過程において, 正規化条件式をどう扱えばよいか?扱い方を掴めていなかった. そこで次数が低い(NY)2と(NY)3 (m=2,3)の場合を検証し直し,解構成の鍵となる可解な永年方程式(非線形常微分方程式)の導出に成功した. (NY)2と(NY)3については, そのインスタントン解の存在の証明を与え, 解の第1項と第2項の具体的な表示を得た. 野海・山田方程式系は次数mの偶奇により形が異なる. 一般のmで,偶数系の場合は,ある程度構成法の指針を得た.奇数系は困難な点があり,引き続き研究が必要である.この研究内容については, 2022年2月20日から22日に開催された「代数解析千葉研究集会」で, 講演報告した. また「Lax対のStokes幾何と非線形のStokes幾何の間に成立する縮退現象(変わり点の合流, Stokes曲線の退化)」の研究を行うために, 4次元パンルヴェ方程式の1つである, 行列型パンルヴェ方程式を対象として, 非線形のStokes幾何と対応するLax対のStokes幾何の解析の研究に取り組み始めた.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,野海・山田方程式系のインスタントン解構成法に取り組む. また研究目標に挙げている「Lax対を持つ非線形方程式のStokes幾何の研究」についても取り組みたい.具体的には,行列型パンルヴェ方程式のStokes幾何の構造を研究し, 行列型パンルヴェ方程式のStokes幾何においても,変わり点同士の縮退,変わり点とStokes曲線の縮退,Stokes曲線同士の縮退現象が起きるかどうか?について調べたい。特に,高階パンルヴェ方程式の第1種, 第2種変わり点に着目して研究を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で, 研究集会,研究打ち合わせのための出張を控えたため, 旅費の未使用分が出来た. 来年度は, 研究打ち合わせを再開し, 旅費を使用する予定である.
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