研究実績の概要 |
今年度は, 研究分担者の楠岡 誠一郎, 星野 壮登 両氏と共に, (2次元トーラス上の)exp(\Phi)_{2}-量子場の確率量子化方程式の研究を行った。具体的には, exp(\Phi)_{2}-量子場を不変測度とする拡散過程を白色雑音が駆動する特異確率偏微分方程式の強解として直接構成し, Dirichlet形式から得られる拡散過程と一致することを示した。これは以前の研究の継続であるが, Gauss乗法カオスの理論を援用することで, 電荷定数の条件をL^{1}-regimeへと改良したのは大きな進展であり, 本研究課題の目標の一つが早くも達成された。この研究成果をまとめたプレプリントは, 7月にarXivにて公開した。それと共に海外の専門誌に投稿し, 現在は審査中である。またいくつかの(オンライン)研究集会で口頭発表も行った。
その一方で, 今年度は予想外のコロナ禍にみまわれたために, 共同研究者達との対面での研究連絡に支障が生じ, 量子場の離散幾何解析的な研究に関する議論はあまり進まなかった。 来年度には研究連絡を行い, この方面でも更なる進展が得られることを期待したい。
|
今後の研究の推進方策 |
楠岡, 星野 両氏との共同研究の続きの一つとして, masslessの場合のexp(\Phi)_{2}-量子場の考察が挙げられる。これは数理物理のLiouville量子場から派生する由緒正しい研究対象であるが, 確率測度にならないという技術的な困難も持ち合わせている。今後の研究対象の一つに加えたい。また量子場の離散幾何解析的な研究であるが, 分担者の石渡 氏との研究連絡を頻繁に行って進めていきたい。
|