研究実績の概要 |
今年度も引き続き, 研究分担者の楠岡 誠一郎, 星野 壮登 両氏と共に, (2次元トーラス上の)exp(Φ)_{2}-量子場の確率量子化方程式の研究を電荷定数の条件をL^{1}-regimeの下で行った。昨年度までに, exp(Φ)_{2}-量子場を不変測度とする拡散過程を白色雑音が駆動する特異確率偏微分方程式の強解として直接構成し, Dirichlet形式から得られる拡散過程と一致することを示しており,論文を海外専門誌に投稿していたが, レフェリーとの複数回にわたるやりとりを通して, 論文の内容 (特に, 一般のFourierカットオフ作用素を用いたGauss乗法カオスの概収束性)も改良され, 今年度末に採択された。この成果は数理解析研究所講究録から概説論文としても出版された。さらには重みつきのexp(Φ)_{2}-量子場の確率量子化方程式に対する近似解のtightnessに関する論文も出版された。これらの成果についての口頭発表は, いくつかの(オンライン)研究集会で研究分担者により行われた。 その一方で, コロナ禍が長引き, 共同研究者達との対面での研究連絡に支障が生じた。特に量子場の離散幾何解析的な研究に関する議論であるが, 問題の枠組みをどう設定するかというところでまとまりきっていない。来年度には対面による研究連絡をできるだけ多く行い, この方面でも更なる進展が得られることを期待したい。
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今後の研究の推進方策 |
楠岡, 星野 両氏との共同研究の続きの一つとして, masslessの場合のexp(Φ)_{2}-量子場の考察が挙げられる。これは数理物理のLiouville量子場から派生する由緒正しいホットな研究対象であり, ここ最近はBerkeleyにあるMSRIでの研究プログラムでも取り上げられている。この測度は全測度無限大であり, 確率測度にならないという技術的な困難も持ち合わせている。今年度もほんの少しだけ議論をしたが, 次年度はもう少し真剣に考えたい。また量子場の離散幾何解析的 な研究であるが, 分担者の石渡氏との対面での研究連絡をもっと頻繁に行って進めていきたい。
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