研究実績の概要 |
1次元の複素線形空間の単位円盤 U を高次元空間へと一般化する場合は、n次元多重円盤 Un、ユークリッド単位球 Be を考察するのが自然である。しかし、この2つの領域は、双正則同相ではない。共通な視点としては、どちらも有界対称領域という点であり、これらを更に一般化した領域として、等質領域が考えられる。JB*-triple と呼ばれるジョルダン3重積の構造を備えるバナッハ空間の単位開球 B は等質性をもつ有界対称領域である。 2つのJB*-triple の単位球をそれぞれ B1、B2 とする。B1 から B2 への正則写像φ:B1→B2 に対し、φによる合成作用素 Cφを Cφ(f)=foφ , f∈H(B2,C)で定義する。このような合成作用素について、1変数の単位円盤 U の場合のブロック型空間に関しては、有界性、コンパクト性に関して解明されてきた。 本研究では、これらの結果を有限無限次元のJB*-triple の単位球上のハーディ空間とブロック型空間の間の重み付き合成作用素に拡張して考察し、重み付き合成作用素が有界であるための必要十分条件を与えた。 また、αブロック写像やブロック型空間の間の合成作用素に関する研究では、多重円盤上のαブロック空間から有限次元有界対称領域上のβブロック空間への合成作用素が有界やコンパクトになるための必要条件や十分条件を与えた。 他方、単位円盤上の正則関数や調和関数に対する Bohr 半径に関する様々な結果を、任意の複素バナッハ空間の単位球上の正則写像や多重調和写像に拡張した。 その他、複素ノルム空間の開領域における境界距離関数d に対し、関数-log d が劣多重調和関数であることを示し、さらに、複素プレ・ヒルベルト空間上のリーマン領域の境界距離関数d に対し、関数-log d が局所劣多重調和関数であることを示した。
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