研究実績の概要 |
本研究の目的は、無限大不変測度を持つ可測力学系における determinism と randomness の概念に着目し、様々な数論的変換のエルゴード理論的研究を通して determinism とrandomness の違いを捉える新たな不変量を見出すことにより分類問題を考え、このような系の一般的体系を築くことにある。特に、Erdos予想との関連を強く意識した中で無限大不変測度を持つエルゴード変換に着目し、ergodic Ramsey theoryを追究する。上述の目的に向かった研究実施計画の中で、当該年度では、虚二次体上の様々なタイプの複素連分数変換や実数体上のα-Farey mapsのエルゴード理論的研究に焦点を当てた。主な研究実績は以下の通りである。 [1]ユークリッド数体上での nearest integer 型複素連分数変換のエルゴード理論的性質の導出 ユークリッド数体上での定義された8種類の nearest integer 型の複素連分数 CF(1,R), CF(2,R), CF(3,H), CF(3,R), CF(7,H), CF(7,R), CF(11,H), CF(11,R) に対して、それぞれに付随する複素連分数変換の natural extension の構成に成功した。さらに、その基本領域が finite range structure を持つことや simply connected であることなど、その構造についても明らかにすることができた。本研究成果は後述の研究成果(研究発表欄の[雑誌論文])に記載の学術論文にて発表している。 [2]α-Farey maps の natural extension の構成 実数のα-連分数展開において、その中間近似分数を導出する写像である α-Farey maps について、すべての0<α<1に対する natural extension の構成を試みた。本研究は、K.Dajani, C.Kraaikamp, H.Nakadaとの共同研究として取り組んでいる。
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