研究課題/領域番号 |
20K03643
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研究機関 | 名古屋経済大学 |
研究代表者 |
下村 尚司 名古屋経済大学, 経済学部, 教授 (30440770)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Bratteli-Vershik / zero-dimensional systerm |
研究実績の概要 |
非自明なBratteli-Vershik 表現(BV 表現と略す)はC*環論から生まれ,主として周期点を含まない系,特にカントール極小系(CMS と略す)の表現として,豊かな成果をもたらしてきた.私は,コンパクト距離化可能零次元集合上の同相写像の力学系(零次元系と略す)全般に,非自明なBV 表現が構築できることを示した.この論文は申請段階では査読中であったがAdvances in Mathematics誌に掲載されている.零次元位相力学系のBV表現について,Downarowicz and Karpel 氏達は独立にBratteli-Vershikizability と言う言葉で,特殊な一部を除くあらゆる零次元系に,非自明なBV 表現が存在するとしている.初年次には,申請者の得ている非自明さとこの性質の関連を調べることを重視した目的であった.これについて,望外の結果を得ることが出来,従来周期点を持たない系について為されていた結果を,ほぼ全ての零次元系に拡張することができた.このことはDownarowicz and Karpel 氏達の結果を拡張し,更に証明を簡略にすることにも繋がった.一例として,Downarowicz and Karpel 氏達の結果をbasic set 達との関係について述べることに成功した.basic set の存在についても,従来の方法とは異なる形で,予想に反して,別の意味で自然な存在証明を発見した.ただし,上記の研究達は何れも,位相力学系の研究に留まり,未だ査読中である.更に,C*環論との繋がりについては,結果を出すことが出来ていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請の前提であり,査読中の論文が重要な学術誌に掲載された.更にDownarowicz and Karpel 氏達の結果を簡略化することが出来,同時に,Medynets氏達が行っていた周期点を持たない系達の成果のうちで,位相力学系的なものを,一般の零次元系において統合することができた.ただし,その成果は零次元系とBratteli-Vershik表現との関係に留まり,C*環論方面に成果をもたらすには至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
申請時の想定と異なり,既にC*環論との関係の一歩手前まで研究が進展していると考えている.よって,C*環論の学習が不可欠となった.そのために関数解析学の基礎から勉強を始めている.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により,研究集会や学会がオンラインとなり,旅費が必要ではなくなりました.また,私の科研費にて国内の研究者を訪問することも困難になっており,このために申請していた旅費を使用しておりません.研究が予想外に進みましたが,新たな論文や図書の購入費用はさほど発生しませんでした.
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