研究課題
非可換確率変数に付随する積率公式の研究は,確率変数の量子分解表示にその研究の源がある.ガウス型とポアソン型の非可換な確率変数を表す作用素が肝であるが,前者に比して,後者の研究は個数作用素や恒等作用素の類似や変形が多様であるため,多くの課題解決を必要とすることが本研究過程で分かってきた.それは各々に性質を追求する必要が生じたことを意味する.そのため,第一段階として,荷重自由フォック空間とその上での荷重生成・消滅作用素および荷重恒等作用素を用いたある種の荷重自由ポアソン型作用素に考察対象を限定し,それに付随する積率公式について数え上げ組合せ的見地からの研究を行った.非交差分割は自由確率論における自由独立性を理解するために重要な組合せ的視点であることは良く知られている.本研究では,標準的な自由確率論で用いられる分割より更なる細かなルールを導入し,それを図面カード表示法によってモデル化することで,分割に内在する交差点,分割点の深さ等の組み合わせ的側面と作用素の非可換性およびその統計性のより深い関係解明に踏み込むことが可能となった.その結果,対応する荷重自由生成・消滅作用素とその荷重自由真空期待値の計算を通して,変形直交多項式や付随する確率分布を解明するなど,大変興味深い非自明な結果を得ることが出来た.自由ポアソンおよびブールポアソンをつなぐ新たな補間公式を得ただけではなく,作用素に付随する分割が内包する非可換性に由来する確率分布の発見につながった.非自明な例の一つとして条件付き自由確率分布のポアソン類似を含んでいることは極めて興味深く,通常の確率論にはない非可換確率論特有の成果を得ることが出来た.本年度に得た成果は研究協力者と共同論文を執筆し,国際数学専門雑誌に投稿しアクセプトされた.R5年10月末には研究集会「非可換確率論と関連領域」を研究協力者らと主催した.
2: おおむね順調に進展している
荷重自由ポアソン型確率変数の量子分解表示やそれに関わる組合せ的モーメント公式,および条件付きポアソン分布などとの関係解明に成功したことから,おおむね順調であったと判断する.
荷重自由ポアソン型確率変数に限定することなく,より広いクラスの変形補間理論への発展や,条件付き自由確率分布との更なる関係解明に注力する.また,引き続き研究協力者らと研究討論・情報交換を行う.
本務多忙のため,当初予定していたいくつかの研究打合せや研究集会出席に伴う海外渡航を見送らねばならなかった.次年度使用額については,R5年度実施困難であった研究協力者らとの対面形式による研究打合せ,および成果発表等による出張旅費として使用する予定である.
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Infinite Dimensional Analysis, Quantum Probability and Related Topics
巻: online first ページ: 2450001-1--22
10.1142/S0219025724500012
https://souran.aichi-edu.ac.jp/teachers/ccdaecff717209f3.html