正定値の行列値関数でその逆行列も可積分であるようなシンボルを持つテプリッツ行列を考える。このようなテプリッツ行列は、minimal な多変量定常過程に対応する。井上は、このテプリッツ行列の逆が、双対過程の有限予測により表現されることを示した。また、この表現式を用いて、同じクラスのテプリッツ行列の逆に対する明示公式を導いた。井上は、この明示公式の有用性を、二つの応用で示した。一番目は、テプリッツ系の解の強い収束性に関する結果(Baxter型定理)である。二番目は、シンボルが有理的なテプリッツ行列の逆行列に対する閉形式公式である。この閉形式公式から、テプリッツ系の線形時間アルゴリズムが得られる。
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