研究課題/領域番号 |
20K03659
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中野 史彦 東北大学, 理学研究科, 教授 (10291246)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ランダムシュレーディンガー作用素 / 減衰ランダムポテンシャル / 準位統計 |
研究実績の概要 |
(1) ランダムシュレーディンガー作用素(RSO)の固有関数のスケーリング極限:減衰ポテンシャルを持つ1次元ランダムシュレーディンガー作用素において,その固有関数のスケーリング極限を調べる研究を数年前から続けているが,固有値の満たす点過程の分布極限がポアソン過程であるときに,ある程度一般的な枠組みの下で,固有値とその局在中心のペアのなす点過程の分布極限もまた(直積空間上の)ポアソン過程になることを示した.また、一般的な枠組みの中で、エネルギーの局所的な点過程の強度測度が大域的点過程の分布を与えることを示した。 (2) RSOの固有値の極値統計:減衰ポテンシャルを持つd次元ランダムシュレーディンガー作用素において,その状態密度を求めた. また, その有限体積版において,最大固有値から数えて任意の有限個をとってスケーリングして得られる点過程を考える. ランダムポテンシャルの分布においてある程度一般的な仮定の下において,この点過程が非一様なポアソン過程に分布収束することを示した. (3) RSOの固有値のゆらぎ:減衰ポテンシャルを持つ1次元ランダムシュレーディンガー作用素において,そのlinear statisticsを複数の解析関数について考え,そのゆらぎの同時分布が多次元ガウス分布に分布収束することを示した.また, linear statisticsの期待値の漸近公式を求めた. (4)Top to random shuffle : 色付き置換群上のTop to random shuffleにおいて,推移確率行列の固有値とその多重度,原始ベキ等元の導出を行った.また,混合時間の漸近評価を行い,それがカットオフ現象を示すことを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、減衰するランダムポテンシャルを持つシュレーディンガー作用素において、(1) 固有関数のスケーリング極限を求め、(2)その手法を応用してベータアンサンブルの高温極限の準位統計を研究する、ことであった。(1) は順調に進捗しているが、(2) はそのための準備が遅れている。ところが、最近(1) に関連する研究が予想外の方向に進展しており、様々な研究成果を挙げることができた。以上のことから、全体としては概ね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 「研究実績の概要」(2)で調べた作用素において、ランダムポテンシャルのテイルが遠方でより強く減衰するときに、極値統計を調べる。テイルの遠方での減衰の速さに応じて、極値統計の傾向を分類したい。 (2) 研究実績の概要」(3)で調べた作用素において、考える連続関数がある特別なクラスに属するときには、そのcritical exponent が変わると予想されるので、それを調べる。さらに、linear statistics を連続関数の代わりに区間上の定義関数に置き換えて、Prufer coordinate の手法を用いて、それを調べる。 (3) (2) の手法をベータアンサンブルに対応するジャコビ行列、またはその一般化に応用して、その高温極限における linear statistics, 及び準位統計の問題に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で出張回数が激減したため。
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