研究課題/領域番号 |
20K03665
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
山崎 教昭 神奈川大学, 工学部, 教授 (90333658)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 実函数論 / 関数方程式 / 仮似変分 / 自由境界 / 最適制御 |
研究実績の概要 |
本年度は,Fremondにより提唱された形状記憶合金モデルに対する熱制御問題を考察した。Fremondモデルでは,物質の状態を表す関数(解)が三角形の制約領域に属しているため,最適制御問題の詳細な解析が困難になっていた。そこで,本研究では,三角形の制限領域を滑らかな領域で近似する手法を提案し,最適制御問題の解になるための条件の導出に成功した。 また,特異拡散効果を考慮した相転移モデルの最適制御問題を考察した。実際,特異拡散項を近似する族を明確化するとともに,制約項を近似することで最適制御問題の解になるための条件の導出に成功した。更に,その条件を利用して,近似最適制御問題の解をコンピュータを用いて数値実験的に求めるためのArmijo 型のアルゴリズムを提案するとともに,その収束性を証明した。そして,近似状態システムに対する最適制御問題の解を数値実験的に求めた。この点は,本年度の重要な研究成果である。 更に,これまで構築した仮似変分不等式論を再定式化し,主要な非線形項が未知関数(解)に依存した抽象仮似変分発展方程式論を提唱し,その解の存在について一般的な定理を証明し,可解性理論を構築することができた。このことにより,移流項を含む仮似変分不等式に対する新しい解析方法を提案することができた。また,本年度構築した抽象仮似変分発展方程式論に対応する特異最適制御問題の定式化とその解析近似方法論を構築し,特異最適制御問題の解の存在,近似制御問題との関係性等について明らかにした。これらの研究成果の応用として,移流項を含む仮似変分不等式に対する特異最適制御問題を考察できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
世界的な新型コロナウイルス感染拡大により,各種の国際会議や研究集会が中止となるとともに,海外渡航や国内出張も禁止となった。このことにより,研究連絡のため共同研究者を訪問し,共同論文を作成するなどの研究活動が低迷した。したがって,現在までの進捗状況としては,遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行った研究テーマを継続して行い,さらに精緻な研究成果をめざす。 また,今年度の研究成果や解析方法を踏まえ,Kobayashi-Warren-Carter 型の金属結晶粒界問題の最適制御問題に取り組む。 一方,今年度構築した抽象仮似変分発展方程式論は,不可逆相転移問題や多孔質媒体内における楕円・放物型方程式には応用可能ではない。そこで,それらに対応する新しい抽象仮似変分発展方程式論の定式化と可解性について重点的に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な新型コロナウイルス感染拡大により,各種の国際会議や研究集会が中止となるとともに,海外渡航や国内出張も禁止となった。このことにより,研究連絡のため共同研究者を訪問し,共同論文を作成することができなくなったため,次年度使用額が生じた。 使用計画としては,各種の最適制御問題に対する数値実験を行うための機器備品等を購入する予定である。
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