研究課題/領域番号 |
20K03667
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
磯崎 洋 立命館大学, 総合科学技術研究機構, プロジェクト研究員 (90111913)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 散乱理論 / 逆問題 / S行列 / ディリクレーノイマン写像 / 非線形逆散乱 |
研究実績の概要 |
(1)多様体上の非線形波動方程式に関する逆散乱問題 : ペンローズの提唱した、ミンコフスキー空間を3次元球面を底空間とする柱状領域に埋め込む方法にもとづいてローレンツ計量を持つ空間における線形波動散乱の問題を考察した。ダランベルシアンの本質的自己共役性を証明し、極限吸収原理を示した。スペクトル表示を構成することによってファインマンの伝搬作用素を定義し、S行列の構造を調べた。これによりローレンツ多様体上の線形散乱理論のモデルを確立した。最終的には非線形散乱理論を目指す。非線形逆問題に関してはすでにミンコフスキー空間における非線形逆問題の原型を形作りつつあり、これらの順問題・逆問題を総合して非線形波動方程式に対する散乱行列からミンコフスキー空間の計量や非線形項を定める逆問題の完成を目指す。 (2)グラフ上の離散波動作用素に関するゲルファントの逆問題:有限グラフ上のラプラシアンに対してその境界スペクトルデータからグラフの構造を定める逆問題を解決した。さらに局所的に摂動された周期的格子上のシュレーディンガー作用素にこの方法を応用し、散乱の逆問題を解決した。 (3)量子グラフ上の逆散乱問題:デルタ関数型の結合をもつ量子グラフに対して、S行列から結合定数を定める逆問題を解決した。さらに平行格子、六角格子の場合にポテンシャルと結合定数をS行列から定める逆問題を解決した。 (4)半空間における弾性波動方程式の解の漸近挙動:3次元半空間における弾性波動方程式の定常問題において一般化された固有関数の無限遠における漸近挙動を解析し、領域内部を伝わる物体波と表面のみを伝わるレーリー波を同時に記述する漸近展開を導いた。 (2)、(3)、(4)は現在投稿中である。(1)はさらに研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
おおむね当初の計画にそって進めており、当初の半分以上の事項において予期していた成果を得つつある。しかしコロナ禍によって教育負担や大学運営のための負担が増えたことによって直接の対面による議論の機会が少なくなり、研究にやや支障が出ている。Zoom, Skype を通じて海外共同研究者と議論をしているが、共通言語である英語が双方ともに母国語ではないため共通の理解が不十分になる場合があり、やはり直接の対面による議論が望ましい。フィンランド(ヘルシンキ)との共同研究においては各グループの個別研究は順調な進展をしているが、それを総合していく段階において計画細部の検討を必要としている。フランス(マルセイユ)との共同研究である摂動されたスラブ領域における逆散乱問題は初期段階は終了したが、より精密な研究打ち合わせを必要としている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は海外共同研究を主体とする。(1)については現在までの結果をまとめると共に非線形問題への適用を中心に研究を進めていく。今年度中にフィンランドにおいて共同研究を行う予定である。フランスとの共同研究も今年度中にフランスに渡航し、研究の重要段階を確立する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で出張ができず旅費として使用できなかった。今年度は外国出張をして海外共同研究を進める.
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