研究課題/領域番号 |
20K03668
|
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
鬼塚 政一 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (20548367)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ダイヤモンドアルファ差分方程式 / h-差分方程式 / q-差分方程式 / 微分方程式 / 漸近挙動 / 有限長性 / ウラム安定性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、本研究の目的は、ダイヤモンドアルファ差分方程式の定性理論を構築し、後退、前進、中心差分方程式の定性理論を統一的に表すことである。ダイヤモンドアルファ差分方程式の解の定性的性質の変化をパラメータαによって判別し、後退、前進、中心差分方程式の類似性・差異性を明確にする。特に本研究で扱う解の定性的性質は、 (i) リヤプノフ安定性と振動性 (ii) 有限長性とフラクタル次元 (iii) ウラム安定性 の3つである。加えて、刻み幅がh>0のh-差分方程式の解の定性的性質と対応する常微分方程式のそれとの違いをhによって判別し、常微分方程式と同様の定性的性質を保存するhの幅を特定するという新機軸をもって挑む。 本年度は、(i) リヤプノフ安定性と振動性に関する学術論文1件、(ii) 有限長性とフラクタル次元に関する学術論文1件、(iii) ウラム安定性に関する学術論文4件が出版され、計6件となる多数の成果を得た。 それぞれの成果について述べる。(i) 2次元半分線形微分方程式系の摂動問題を扱い、良く知られた線形系の摂動問題に関する結果を、Prufer変換と呼ばれる極座標変換の一般化を駆使して半分線形系へ拡張した。(ii) 前年度まで推進していた有限長性に関する研究を完結させ、ある2次元非線形微分方程式系の相平面上における解曲線の長さを調査し、その曲線の長さが有限であるか否かを判定する十分条件を得た。(iii) ダイヤモンドアルファ差分方程式の前段階で考察するべき、h-差分方程式、またこれと比較するq-差分方程式、さらに、ダイヤモンドアルファ差分方程式を考察する際、基準となるHill方程式(2階周期線形微分方程式)についてウラム安定性を考察した。特に、各方程式の厳密解と近似解の誤差を表すウラム定数について精密な調査を行い、最良のウラム定数の導出に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、D. R. Anderson氏(Concordia College)との共同研究を推進し、そのうち2件が既に出版され、2件がアクセプト、1件が出版準備中である。さらに、東北大学田中敏教授との共同研究2件が出版された。また、鬼塚と大学院学生との共同研究2件が出版された。加えて、既に鬼塚の単著論文1件のアクセプトを受けている。さらに現時点で、単著論文を1編投稿中であり、1件の共同研究を含む3編の論文を執筆中である。 上記をまとめると、6件出版、4件出版待ち、1件投稿中、1件共同研究中及び執筆中、2件単著論文執筆中となり、当該年度は予想以上の成果が得られ、研究が進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
近年、微分方程式や差分方程式の研究において、ウラム安定性の研究が注目を浴びており、本研究でも多くの成果を挙げることで、その大きな波に乗れている状態にあると考える。また、ウラム定数の解析手法の構築や最良ウラム定数の導出に力を注ぐことで、ウラム安定性に関する知識やノウハウも充実してきている。これらの経験を重ねる中で、まだまだ未開拓のこの分野には様々な未解決問題が豊富にあることに気づいた。現時点でも多数のアイディアや着想が得られているため、今後は、これまで培った解析手法やノウハウを活かして、ダイヤモンドアルファ差分方程式を含む種々の方程式のウラム安定性に関する研究をさらに推進したい。 加えて、今年度得た有限長性に関する成果の続きの研究として、微分方程式の解軌道のフラクタル次元の導出が期待できるため、これを実現したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた研究集会が、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響でキャンセルになったため。
|