研究実績の概要 |
電磁波を記述する基礎方程式はMaxwell方程式であるが, 光ファイバー中を伝播する光波のモデリングは, Maxwell方程式に非線形媒質効果を取り入れて近似をした後で波の包絡線の時間発展の方程式として導出される非線形 Schrodinger方程式で行われる. 一方, 分散マネージメント光ファイバーという昔から実際に導入されてきた光ファイバー技術がある. その技術とは, 入力した波が元来持つ分散性によりエネルギー損失が起こるのを防ぐために, 分散性をランダムにあるいは周期的に符号変化させて分散の平均をゼロとするようなファイバーを作るというものである. しかしながら, この分散マネージメント光ファイバーのモデル方程式はランダムあるいは周期的な係数を考慮したMaxwell方程式の近似として非線形Schrodinger方程式で表現されるものなのか, しかも分散マネージメント効果というのは導出した非線形Schrodinger方程式のどこに現れてくるのかという疑問が以前から問われていた. この問いに対して, 否定的な解答(例)を得, 単独の非線形 Schrodinger方程式でなく, 非線形Schrodingerのシステムが近似であるはずだという結論を導いた. Lohe (2010 J. Phys. A.)が発表した論文中には「量子同期モデル」と呼ばれる Kuramotoモデルの量子版で非線形シュレディンガー方程式を用いたモデルが提案されている. Loheの提唱モデルは量子デバイス中に量子同期を起こすことにより, 情報をより安定して送ることができるのではないかという発想からきている. そこで2014年あたりから同期の数学的定義に始まり, 時間が十分経った後, どのような種類の同期を起こしているのか等を多くの数学者たちが研究を盛んに行ってきた. しかし, 同期現象がノイズの影響を受けてどのような変化をするかという問いは完全に未解決であった. このノイズの影響を L. Hahn 氏と共に研究した.
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