研究課題/領域番号 |
20K03673
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小野寺 有紹 東京工業大学, 理学院, 准教授 (70614999)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 過剰決定問題 / 自由境界問題 / 発展方程式 / 陰関数定理 |
研究実績の概要 |
本研究課題はBernoulliの自由境界問題,Serrinの問題を含む一般の過剰決定問題に対する解(未知領域)の存在・一意性や,境界条件の摂動に対する領域形状の定量的安定性を導出する統一的解析手法の確立を目標とする.特に発展方程式的解析手法を主眼に置く本研究課題では,従来特別な場合にのみ与えられていた楕円型・双曲型という解の分類を一般の過剰決定問題に拡張し,それらの経験的分類が発展方程式の観点からは非常に明快な理解を与えることを示した.すなわち,従来の単に最大値原理との相性の良さ・悪さという観点だけでなく,ある解が楕円型・双曲型であることは,その解の周辺から初期値を選ぶ場合に対応する発展方程式が放物型か逆放物型であることに対応することを明らかにした.これらの成果を元に,Bernoulliの自由境界問題に対する双曲型解の漸近形状について解析を進めている. 一方,正則性損失構造から従来解析が困難だった地球物理学における数理モデルであるBackus問題に対し,双極子解の摂動問題を考察し成果を得た.前年度の研究では軸対称性の仮定下でソボレフ空間においては正則性損失が起こらないことを発見し,詳細なスペクトル解析を行うことで,その摂動問題の可解性を得ることに成功した.一方,今年度はヘルダー空間では正則性損失が起こり得るが,非線型項の特別な形から,重み付きシャウダー評価によって不動点定理が適用できることを発見した.本研究成果については微分方程式の専門雑誌へ掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Bernoulliの自由境界問題の双曲型解の漸近形状に対する予想は未解決ではあるものの,一般の過剰決定問題に対する考察が飛躍的に進んだ. また,並行して行なっているBackus問題に対する研究も順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画の目標である大域解析によるBernoulli自由境界問題における葉層構造をもつ自由境界の集中現象を導出するため,最終年度後半は集中的に研究時間を費やす.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は当初計画していた研究の方向性とは異なる研究対象に時間を費やしたため,当初計画の打ち合わせや情報収集を次年度へ持ち越したため. 持ち越した研究費については,次年度の打ち合わせや情報収集等の研究計画遂行に使用する.
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