研究実績の概要 |
Trudinger-Moserの不等式は,Sobolevの定理の臨界ケースを特徴付ける関数不等式の1つである.特に,臨界Sobolev空間上のTrudinger-Moser型不等式として,斉次型不等式と非斉次型不等式の2種類が知られている.本研究課題の1つは,関数不等式に付随する最良定数を達成する極大関数の存在・非存在を明らかにすることである.これらの不等式に対する極大関数は,対応するEuler-Lagrange方程式を介して,指数型非線形項を持つ非線形楕円型偏微分方程式の正値解の存在を意味し,その観点において,関数不等式に付随する最大化問題の考察は重要な意義があると認識する.具体的に,斉次不等式と非斉次不等式において,極大関数の存在・非存在に差異が生じていることが分かった.このような差異を引き起こす理由を明らかにし,極大関数が存在するための本質的な条件をある程度明確にすることに成功した.ここでは,Trudinger-Moser型不等式を例に挙げたが,同不等式に留まらず,種々の関数不等式に対して同様の最大化問題を考察し,極大関数を介する楕円型偏微分方程式の構造解析を統一的観点から進めているところである.直近の成果としては,Trudinger-Moser型不等式またはSobolev不等式を含む一般の汎関数に対し,それに付随する変分問題を考え,同変分問題が可解であるあような汎関数に対する一つの十分条件を与えることに成功している.また、今後の研究課題としては、weblet分解を用いた、種々の関数空間の特徴付けを用いて、同不等式に付随する最大化問題への変分的アプローチの開発を研究中である。同目的を達成するためには、例えばSobolev空間を定めるLittelewood-Paley分解とweblet分解の差異を明確にする必要性があると考えている。
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