本年度の研究は1.空間全域で定義された半線型放物型方程式の時間大域解の漸近挙動、2.非コンパクトな軌道を持つ抽象力学系の時間大域的挙動に関する一般論の建設、及び3.非有界外部領域で定義された半線型楕円型方程式の解の存在を行った。第1のテーマについては、任意の時間大域解に関するプロファイル分解を完成させ、この結果を用いて、基底エネルギー値にエネルギー値が収束する任意の時間大域解の漸近挙動を明らかにした。この結果は空間非有界性に由来する解の平行移動距離が初期値のエネルギーで抑えられることを明らかにしたものであり、従来の結果を新たな観点から一般化するものである。第2のテーマについては従来強リアプノフ条件として知られていたコンパクト性に関する条件を非コンパクトな場合に適切に変更することにより一応一般論を展開することができた。しかし新たに導入された条件は強いものであるため、今後のさらなる研究が必要である。第3のテーマについては非自明解の存在をBahri-Coronによるモース理論的手法を用いて示すことができた。 研究期間全体の目標として、1.半線型臨界放物型方程式、2.非有界領域上で定義された半線型放物型方程式、3.H-sysytemに付随する熱流について、時間大域解のプロファイル分解を確立し、その漸近挙動を共通の土台の上で解析することを目指してきた。1についてはほとんど解析が終了し、時間大域解の漸近挙動は空間全域における平衡解のスケールと平行移動の重ね合わせに漸近することが示された。現在論文を執筆中である。2については最終年度に研究が進展し、1.と同様の結果を得、論文を3本執筆した。3については研究の進展が得られず、今後の課題としたい。その他、エネルギー構造が非コンパクトである楕円型方程式(系)の解の存在に関する結果も副産物として得られた。
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