研究実績の概要 |
2階の常微分方程式の1種である Moore-Nehari 微分方程式について研究した. この微分方程式は, 非線形項の係数関数が, 不連続な偶関数となっている. この微分方程式の区間(-1,1)における2点境界値問題を研究した. この方程式は, (0,1)区間を動くパラメーター λ を持っている. 非線形項のべきが, 1より小さい正の数のときに, この方程式について考察した. 解が偶関数または奇関数であるときに対称な解と呼ぶ. 非負整数 n に対して, Moore-Nehari 微分方程式の解が区間(-1,1)において, ちょうどn個の零点を持つときに, n-nodal 解と呼ぶ. この研究において, 任意の非負整数 n に対して, u'(-1)>0 を満たすn-nodal な対称解の存在と一意性を証明した. 非負整数m,nに対して, Moore-Nehari 微分方程式の解が区間(-1,0)にちょうどm 個の零点をもち, なおかつ区間(0,1)にちょうどn 個の零点を持つときに(m,n)解と呼ぶ. この研究において, 任意の非負整数 m,nに対して, (m,n)解が存在することを証明した. 従来では, n-nodal解の存在に関する研究がほとんどであり, (m,n)解に関する研究はなかった. 従って, 本研究はきわめて独創的な研究であり, 解空間の多様性を表すものである. さらに, (m,m)解は, 対称解になることを証明した. 上に述べたように, Moore-Nehari方程式の n-nodal 対称解で u'(-1)>0を満たすものは, 各λ に対して一意であり, これを u(x,λ)と表すときに, これはλの連続曲線になる. 次のことを証明した. n が偶数のとき, この曲線は分岐しない. n が奇数のとき, ただ一つの λ の値で分岐が起きる.
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの研究結果を再確認し, 今後の研究の基盤とする. さらに, 海外や国内の研究集会に対面またはオンラインで参加して, 自身の研究成果を発表する. このとき, 自分の研究結果に対する他の数学者からの評価を受ける. これにより, 自身の研究水準が世界的水準から見てどのような位置にあるかを確認する. また, 研究集会への参加によって, 国内および海外の数学者との情報交換をして, 今後の研究の材料を収集する. また, 共同研究者と研究連絡を取る.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナウイルスの影響で, 国内及び海外の対面での研究集会がなく, 出張費に科研費を使わなかったために次年度使用額が生じた. 来年度は, 研究資料として, 多数の文献, 書籍を購入する. また, パソコンとプリンターを新規に購入する. 次年度使用額は, これらに使用する予定である.
|