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2023 年度 実施状況報告書

粘性解理論の進展:漸近問題と境界値問題

研究課題

研究課題/領域番号 20K03688
研究機関津田塾大学

研究代表者

石井 仁司  津田塾大学, 数学・計算機科学研究所, 研究員 (70102887)

研究分担者 熊谷 大雅  舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (70802081)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード関数方程式 / 粘性解 / 漸近問題 / 境界値問題 / 退化楕円型方程式
研究実績の概要

これまでの研究を基盤として、粘性解理論の新展開を図り、完全非線形偏微分方程式に対する漸近問題と境界値問題を中心に理論と応用の両面で粘性解研究を推進した。ハミルトン・ヤコビ方程式の連立系に対する割引率消去問題の研究を進め次のような成果を得た。割引率消去の極限に於ける連立系の粘性解の(部分列を取ることなく)全列収束が成り立つためには連立系の未知関数に関する凸性が必要であることを研究論文として出版した。割引率消去における凸性の必要性についての成果をより正確に言えば、未知関数に関する凸性を持たない連立系の例を挙げ、この例に於いて割引率消去の極限で粘性解が全列収束しないことを示した。この様な例はB. Ziliottoの論文に於いて陰に示されていたが、本研究では全列収束が成立しない見通しの良い新しい例を構成した。境界値問題について
は、2次元ユークリッド平面における角のある領域に対する非線形ノイマン境界条件を持つ完全非線形退化楕円型境界値問題の研究を進めた。これまでの研究の詳細を再点検し、2次元平面に限定して粘性解に対する比較原理が成立するようなより広いクラスの境界条件を探求したが決定的な結論に至っていない。更に、正斉次ノイマン型境界条件に限定して研究を進めた。部分ラプラス(truncated Laplace)作用素を主要項とする微分方程式に対する粘性解と関連する積分方程式についての研究を行った。部分ラプラス作用素におけるラプラス作用素を分数冪ラプラス作用素に置き替えた方程式を対象に据え、非負粘性解の零集合の構造を明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでの本課題の研究により粘性解理論の基本的な課題への貢献及び漸近問題における貢献が出来た。しかし、主要な課題である角のある領域における非線形ノイマン型境界値問題、割引率消去問題、部分ラプラス方程式の解の性質の研究は完成度が不十分であり更に研究を進める必要がある。海外研究者の招聘による共同研究の遂行にも遅れがある。

今後の研究の推進方策

境界値問題の可解性の研究として、特にノイマン型境界条件の研究を2次元平面上で集中的に研究して来たが、2次元の場合に正斉次ノイマン型境界条件の場合の研究を完成させ、さらに高次元空間での研究を進める。割引率消去問題に関して、完全非線形退化楕円型方程式に対するマザー測度の再検討を行う。2階の方程式に対してこれまでに導入された(一般化された)マザー測度は個々の方程式に対する依存度が強いので、いろいろな漸近問題への応用には困難がある。広いクラスの完全非線形退化楕円型方程式に対して同時に適用可能な一般化されたマザー測度の導入とその応用を図る。同時に分数冪ラプラシアンを含む微分積分方程式に対する割引率消去問題の研究を進める。部分ラプラス方程式の積分方程式版の研究を進める。特に半空間におけるリューヴィル型定理の確立を目指す。更に部分ラプラス方程式に対する粘性解の存在定理の完成を図る。海外研究者の招聘による共同研究の推進を図る。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナ感染症の影響で研究遂行が遅れる状況にあったが、特に本課題に関する海外での研究成果の公表および海外研究者の招聘が研究代表者の健康上の理由もあり実現できなかった。国内での課題研究の推進に加えて、海外研究者の招聘の遅れを取り戻して研究成果の充実を図る。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] サピエンツァローマ大学(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      サピエンツァローマ大学
  • [雑誌論文] The vanishing discount problem for monotone systems of Hamilton-Jacobi equations: a counterexample to the full convergence2023

    • 著者名/発表者名
      Ishii, Hitoshi
    • 雑誌名

      Math. Eng.

      巻: 5 ページ: pp. 10

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Propagation of minima for nonlocal operators2023

    • 著者名/発表者名
      Birindelli Isabeau、Galise Giulio、Ishii Hitoshi
    • 雑誌名

      Proceedings of the Royal Society of Edinburgh: Section A Mathematics

      巻: Online ページ: 1~14

    • DOI

      10.1017/prm.2023.49

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] ハミルトン・ヤコビ方程式の割引率消去における収束問題に関する一反例2023

    • 著者名/発表者名
      石井仁司
    • 学会等名
      応用解析研究会40周年記念講演会(早稲田大学西早稲田キャンパス55号館N棟)
    • 招待講演
  • [備考] Home page of Hitoshi Ishii

    • URL

      https://hitoshi.ishii.w.waseda.jp/

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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