研究課題/領域番号 |
20K03691
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
佐藤 洋平 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00465387)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 変分法 / 摂動法 / 楕円型偏微分方程式 / 連立楕円型偏微分方程式 / シュレディンガー方程式 / 最小化問題 |
研究実績の概要 |
連立シュレディンガー方程式の定在波解を記述する方程式として知られる全空間上で定義された3つの楕円型方程式から成る連立方程式について研究を行った。この連立楕円型方程式の定在波解は、対応する汎関数の最小化問題を達成する関数として特徴付けられる。しかし、連立方程式の相互作用項に斥力的な項が混じっている場合、全空間では互いに限りなく離れていくような単独方程式の解の組の列が最小化列となり、最小化列がコンパクトでない。実際に最小化問題を達成する関数も存在しないことが知られている。他方、球対称関数に制限して最小化問題を考えると、最小化列がコンパクトとなることが容易にわかり、最小値を達成する球対称関数が存在する。 本年度の研究では、相互作用項に引力的な項と斥力的な項が混じっているとき、偶関数に制限して最小化問題を考えても、concentration-compactnessの議論と互いに限りなく離れていくような単独方程式の解の相互作用の評価を組み合わせることで、最小化列のコンパクト性が得られることを発見した。その結果、対応する最小化問題の最小値を達成する偶関数が存在する。この研究はユタ州立大学(福州師範大学)のZhi-Qiang Wang教授との共同研究であるが、新型ウィルスの影響で論文執筆が遅れている。
さらに、この手法は全空間上で定義された2つの楕円型方程式から成る連立方程式にも適用できることがわかった。その結果、2つの方程式から成る連立楕円型方程式の相互作用項が斥力的なときも、対応する汎関数に対して、偶関数に制限した最小化問題を考えると、最小値を達成する偶関数が存在することを証明した。またその偶関数は球対称関数でないことも証明した。この結果は、現在論文としてまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全空間上で定義された連立楕円型方程式に斥力的な相互作用項が含まれるとき、対応する最小化問題を偶関数に制限すると最小値を達成する偶関数の存在が示せることを発見し、研究を行った。この研究は当初の研究計画には明示的には含まれていなかった。しかし連立シュレディンガー方程式の定在波解を記述する方程式として知られる連立楕円型方程式は全空間上で定義される方程式である。そのため、この全空間における結果は重要な研究であるため、当初の研究計画から少し外れて研究を行った。 また新型ウィルスの影響により論文執筆が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
3次元空間の球上で定義された3つの楕円型偏微分方程式から成る連立方程式を考え、二つの相互作用項の係数が負の数で十分小さく、残りの一つの相互作用項の係数が正の数で十分大きいときの非球対称解の多重存在を示す。先行研究では少なくとも6個の非球対称解の存在が示されているが、本研究では任意の個数の非球対称解の存在を示す。この問題の解決の有力なヒントは、円環上で定義された単独方程式の非球対称解の多重存在の証明法にあると期待していため、この証明法の理解を深める。 また全空間上で定義された連立楕円型方程式に対する次の2つの結果の論文を執筆する。 ・3つの方程式から成る連立方程式で、相互作用項に引力的な項と斥力的な項が混じっているとき、偶関数に制限して最小化問題を考えると、最小値を達成する偶関数が存在すること。 ・2つの方程式から成る連立方程式で、相互作用項が斥力的なとき、偶関数に制限して最小化問題を考えると、最小値を達成する偶関数が存在し、その関数は球対称関数でないこと。 さらに全空間上で定義された無限に強い引力効果をもつ連立非線形楕円型方程式の解構造についても研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウィルスの影響で対面の研究打ち合わせを行うことができなかったこと、参加予定であった研究集会が中止またはオンライン開催となったこと、講演者を招待して開催する予定だった「さいたま数理解析セミナー」の回数が削減されオンライン開催になったことにより、旅費・謝金として使用する予定だった研究費を使用できなかった。
(使用計画)本年度得られた研究成果を日本数学会等の国内研究集会で発表する旅費に充てる。また、延期になっていた国際研究集会のAIMSが開催される場合は、その旅費にも充てる。
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