研究課題/領域番号 |
20K03693
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
村田 実貴生 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60447365)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 応用数学 / 解析学 / セル・オートマトン / 反応拡散系 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
「微分方程式と同水準の解析が可能な」セル・オートマトンの一群の構築およびその解析を行うこと、そのセル・オートマトンを現実問題に適用し、微分方程式に替わる新しい数理モデルとして活用すること、が研究の目的である。具体的には、偏微分方程式のうち、反応拡散方程式に対応するセル・オートマトンとして研究代表者が提案した「Max型拡散セル・オートマトン」について、解析のための理論を確立し諸性質を解明すること、および「Max型拡散セル・オートマトン」を現実の反応拡散現象の数理モデルに応用することで様々な反応拡散現象の本質的な発生機構を解明すること、である。 当該年度においては、競争拡散方程式のトロピカル差分化に関する研究を行った。競争拡散方程式は競争的な関係にある2種の生物種が共に拡散しながら繁殖を行うような現象を表す数理モデルとして活用される反応拡散方程式である。研究代表者が提案したトロピカル差分化の手法は反応拡散方程式から画一的な操作によりセル・オートマトンが構成できるものであり、両者に同じような挙動を示す解が存在することが複数の反応拡散方程式で確かめられている。 競争拡散方程式にトロピカル差分化の手法を適用することにより、あるルールのMax型拡散セル・オートマトンを構成できることを示した。そのMax型拡散セル・オートマトンに競争拡散方程式と同じような挙動を示す解が存在することを示した。また、競争拡散方程式には2つの解の初期状態に適当な順序関係を定めると時間発展後もその順序関係を保つという性質がある。競争拡散方程式のトロピカル差分化で得られるMax型拡散セル・オートマトンとトロピカル差分化の過程で得られる差分方程式と超離散方程式のすべてについて、2つの解が順序関係を保存する性質があることを示した。 これらの研究成果について、学会と研究集会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Max型拡散セル・オートマトンについて、当該年度においては競争拡散方程式のトロピカル差分化があるルールのMax型拡散セル・オートマトンとなることを示した。また、両者の解に共通の性質があることを示した。各ルールのMax型拡散セル・オートマトンと各種の反応拡散方程式との関係を明らかにし、両者に共通する性質が存在することを示しておくことは、Max型拡散セル・オートマトンを反応拡散現象の数理モデルに応用するために重要なことであると考える。 Max型拡散セル・オートマトンを反応拡散現象の数理モデルとして活用するための成果が継続して得られているので、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に研究を行ったMax型拡散セル・オートマトンのチューリング不安定性に関する成果と競争拡散方程式のセル・オートマトン化に関する成果について、これまでの研究結果をまとめ、その研究結果を学術論文により発表する。 Max型拡散セル・オートマトンのチューリング不安定性について、特に空間2次元の場合を研究対象として、数理モデルとして活用できるように更に研究を進める。 競争拡散方程式のセル・オートマトン化について、空間2次元の場合の研究に着手して、数理モデルとして活用できるように更に研究を進める。 Max型拡散セル・オートマトン一般について、反応拡散方程式の性質との相違点を明らかにして、数理モデルとして活用できるように研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により研究集会が中止あるいはオンラインでの開催となり、旅費の使用額が予定より大幅に減額となり次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、より研究が推進するように、文献資料購入のための物品費の一部に充当する使用計画をたてる。
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