研究課題/領域番号 |
20K03694
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
出口 英生 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (30432115)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | コロンボの一般関数の空間 / 単独保存則方程式 / 一般関数解 / 正則性 / 特異性の伝播 |
研究実績の概要 |
超関数の理論は、線形位相空間の理論に基づいた本質的に線形な概念である。この理論は偏微分方程式の研究に多大な貢献をもたらしたが、滑らかな係数を持つ線形偏微分方程式の研究に対してさえ、十分でない。さらに、最近の偏微分方程式の研究は、特異性のある係数や初期値を持つ線形偏微分方程式だけでなく非線形偏微分方程式へと重点が移行してきている。このような方程式の研究に超関数を用いるためには、超関数の積をはじめとした非線形な作用に関する理論が必要となる。そのような方向の一つとして、コロンボによって導入された一般関数の理論が注目されている。コロンボの一般関数の空間は、超関数の空間を含む微分多元環であり、部分多元環として滑らかな関数の空間を含む。さらに、この空間は、積だけでなく一般の非線形作用に関しても閉じているので、特異性のある係数や初期値を持つ線形又は非線形偏微分方程式の解を研究するのに、非常に重要で便利な空間である。
本年度は、昨年度に引き続き、コロンボの一般関数の理論を用いて、粘性を伴う単独保存則方程式に対する初期値問題を扱った。昨年度、コロンボの一般関数の空間の適当な部分空間において初期値問題を定式化し、一般関数解の存在性と一意性を証明した。粘性係数が無限小であるならば、初期値のあるクラスに対して、一般関数解はエントロピー解と association(コロンボの一般関数の空間における弱い等号)の意味で一致することが知られている。この意味で、一般関数解とエントロピー解の特異台は一致するが、本研究では、association の意味ではなく、直接、一般関数解の特異台を調べ、エントロピー解のそれとの比較を行った。また、初期値がデルタ関数やデルタ関数の導関数など強い特異性を持つ関数の場合、初期値の特異性がどのように伝播するかも詳しく調べた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロンボの一般関数の理論を用いて、粘性を伴う単独保存則方程式に対する初期値問題の一般関数解の正則性、特異性の伝播に関していくつか成果を挙げることができた。このことから、研究は順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、波動方程式に対する初期値問題の一般関数解の存在性、一意性、正則性、特異性の伝播、(超関数解が存在する場合)超関数解との関係を研究する。このための手段として、エネルギー評価を用いる方法や不動点定理を用いる方法が適用可能かどうか考察する。また、インスブルック大学のオーバーグッゲンバーガー教授を訪問し、共同研究を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 新型コロナウイルスの影響で、予定していた海外出張ができなかったため。 (使用計画) 次年度の国内出張、偏微分方程式論と一般関数関連の図書の購入、Mathematicaを用いた偏微分方程式の近似解の計算、論文作成や成果発表のためのノートパソコンの購入にあてる予定。
|