研究課題/領域番号 |
20K03695
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
河邊 淳 信州大学, 工学部, 特任教授 (50186136)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 非加法的測度 / Choquet積分 / Sugeno積分 / Shilkret積分 / 集合族が定める位相 / 実可測関数空間 / 測度収束 / 開球条件 |
研究実績の概要 |
1.非加法的測度と非線形積分により実可測関数全体からなる空間F(X)上に導入された6つの位相がもつ性質を統一的に議論するために,集合族が定める位相の概念を新たに提案し,従来の議論を再構成した.これら6つの位相を統一的に議論する際の障害の一つは,6つの位相のうち5つは,直積空間F(X)×F(X)上の関数を用いて定式化されている一方で,AssaとZimperが導入した位相は,この種の関数を用いずに定義されている点にあった.そこで,新たに提案した集合族が定める位相を用いて,統一的な理論展開を行った.具体的には,以下の研究成果が得られた. (ⅰ)集合族が定める位相は列型空間となる. (ⅱ)集合族が定める位相に関して,任意の開球が近傍となるための必要十分条件は,その位相が第1可算公理を満たし,任意の点列に対して,集合族による収束性(これをB-収束という)と定めた位相による収束性が同値となることである. (ⅲ)先行研究で与えられた5つの位相(Sugeno積分が定めるSu位相,Choquet積分が定めるCh位相,Ky-Fan型のKy位相,Assa-ZimperによるAZ位相,Dunford-Schwartz型のDS位相)に加え,新たにShilkret積分が定めるSh位相を考察し,有限な非加法的測度に対しては,これら6つの位相がすべて一致することを示した.さらに,この一致した位相による収束性と可測関数列の測度収束性が同値となるための十分条件を与えた.これらの結果により,上記6つの位相の性質を関数列の測度収束性を用いて調べることが可能となった. 2.多くの研究者による非加法的測度と非線形積分に関する現在までの研究成果をまとめ,それらを社会に還元することを目的として,令和5年度の研究成果を含む洋書の執筆を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集合族が定める位相を新たに提案し,実可測関数からなる空間上に非加法的測度と非線形積分を用いて導入した6つの位相の性質を統一的に議論した研究「非加法的測度と非線形積分により可測関数空間上に導入された位相の一致性」が出版された.また,非加法的測度と非線形積分に関する研究成果を社会に広く還元することを目的として,令和5年度の研究成果を含む洋書の執筆を開始した.
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画・方法に基づき,下記の研究を推進する. 1.令和5年度の研究では,非加法的測度が有限の場合に6つの位相が一致することを示したが,この有限性の仮定を取り除くことができるかを考察する.また,Su位相とDS位相に対しては,それらが開球条件を満たすために非加法的測度に課すべき必要十分条件がすでに解明されている.そこで,残りの4つの位相,すなわち,Ch位相,Ky位相,AZ位相,Sh位相に対して,それらが開球条件を満たすために非加法的測度に課すべき必要十分条件を見出す. 2.得られた成果を,国内外で開催予定の学会やシンポジウムで発表し,広く周知するとともに,会議参加者との質疑応答や議論を通じて,新たな切り口での非加法的測度論の研究指針を見出す.
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次年度使用額が生じた理由 |
エフォートに対する考慮や研究の進捗状況により,当初に予定していた研究成果発表及び研究打ち合わせのための国内外の出張をいくつか取りやめたことにより,次年度使用額が生じた.次年度使用額は,令和6年度請求額と合わせて主に旅費として使用する.
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