研究課題/領域番号 |
20K03696
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
松本 敏隆 静岡大学, 理学部, 教授 (20229561)
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研究分担者 |
渡邉 紘 大分大学, 理工学部, 准教授 (30609912)
小林 良和 中央大学, 理工学部, 共同研究員 (80092691)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 安定性条件 / 準線形方程式 / 発展作用素 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、定義域が稠密でない生成作用素が時間に依存する場合について、前年度に得ていたMagal-Ruan(2007)の安定性条件の不等分割版の候補についてさらに検討を加え、少なくともサイズ構造を持つ人口問題には適用可能と思われる条件を得た。先行研究であるOka-Tanaka(2005)の生成定理の安定性条件をこの新しい条件に置き換えて、発展作用素の生成定理の証明を進めている。
研究分担者の渡邉は、準線形放物型・双曲型単独保存則の1次元初期値問題を考察し、エントロピー解の時間大域的挙動を調べるために高々m個の不連続点を持つ進行波解を構成して、進行波の漸近安定性に関する結果を得た。さらに、Allen--Cahn型方程式と結晶粒界現象を記述するKobayashi-Warren-Carter型数学モデルとの連立系を考察した。この連立系の各方程式の未知関数はそれぞれ結晶の凝固度、配向度、平均偏角を表しており、この連立系モデルは重み付き全変動汎関数を含むエネルギー汎関数の勾配流として記述することができる。エネルギー汎関数の定義域より広い関数空間に属する初期値に対して、エネルギー消散性を持つ解(エネルギー消散解)の存在を証明し、放物型連立系の解としての平滑化効果が働くことを確認するとともに、エネルギー消散解の時間大域的挙動も得た。
研究分担者の小林は、距離空間におけるリプシッツ作用素の一般的な発展作用素のクラスを考察した。一般的かつ適切な安定条件と適合性条件の検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
定義域が稠密でない生成作用素が時間に依存する場合については、当初の計画通り安定性条件の有力な候補を見つけることができた。この条件はサイズ構造を持つ人口問題には適用できる可能性が高く、発展作用素の生成定理の証明の検討を行いながら、他の問題へも適用できるように条件の一般化・精密化を進めている。準線形方程式の研究においては、放物型・双曲型の性質が混在するという難しい状況の中、先行研究よりも一般的なクラスの初期値に対する解の存在、平滑化効果、漸近挙動に関する新しい結果が得られた。また、距離空間におけるリプシッツ発展作用素についても、一般的かつ適切な安定性条件の検討を進めている。以上の事から、研究計画全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
先ずは、生成作用素が時間に依存する場合に発展作用素の生成定理の証明を完成させることを目指す。それと並行して、人口問題以外の初期・境界値問題へも適用できるように安定性条件の見直しを進めて行く。余裕があれば、準線形方程式の場合の生成定理についても検討する。研究目的達成のため、引き続き研究分担者と協力して研究を進めるとともに、オンラインで開催される研究集会等にも参加して最新の情報の収集と成果発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスによる移動制限や、学会・研究集会の開催中止あるいはオンライン開催に変更されたため、研究代表者、研究分担者ともに国内外への出張旅費を全く使用することが出来なかったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。次年度も旅費の使用については見通しが立たないが、研究に必要な書籍やパソコン等の購入にあてることを計画している。
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