研究課題
調和解析(実解析)の分野では,2000年頃から線形の理論を多重線形の理論へと拡張する話題がメインテーマの1つとして活発に研究され,現在ではこの種の話題を多重線形調和解析と呼ぶことが多い.多重線形調和解析は,単なる線形理論の一般化などではなく,調和解析の問題として眺めても非常にチャレンジングであるし,また応用面から眺めても偏微分方程式論の発展の可能性を大いに秘めている.本研究では正則性の観点から多重線形フーリエ乗法作用素および多重線形擬微分作用素に代表される多重線形作用素に対する有界性定理の精密化を目標に,特に L^2 の特別な構造をとらえた研究を目指している.これまでの研究では,主に双線形フーリエ乗法作用素や双線形擬微分作用素を扱ってきたが,2021年度はこれらを含む双線形フーリエ積分作用素の研究を開始した.双線形の枠組みでのフーリエ積分作用素の解析は非常に難しく,まだまだ研究すべき題材があるのだが,それらの研究は停滞しているように思われる.当該年度に行った文献調査により,フーリエ積分作用素の本質的な部分である相関数が変数分離している場合としていない場合では決定的な違いがあり,今後取り組むべき課題を明確にすることができた.また,2020年度に得た S_{0,0} 型の双線形擬微分作用素の精密な有界性定理の応用先を模索した.滑らかではない積分核を持つ双線形特異積分作用素へ応用できることは知られており,我々の結果を用いることにより,さらなる発展を期待して研究している.2022年度も引き続き取り組みたい.
2: おおむね順調に進展している
多重線形フーリエ積分作用素に対して,今後取り組むべき課題を明確にすることができた.
これまでに培った多重線形作用素の解析の経験を,今後は多重線形の枠組みでのフーリエ積分作用素へと活かしていく.
2021年度も2020年度に引き続き,新型コロナウイルス感染症の影響で出張になかなか行くことができず,次年度使用額が生じた.2022年度は,書籍などの研究をサポートしてくれる物品などに科研費を有効に使用させていただき,また,出張にも行ける機会が増えることを期待している.
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Journal of Functional Analysis
巻: 282 ページ: 109329, 28 pp
10.1016/j.jfa.2021.109329
Journal of the Mathematical Society of Japan
巻: 73 ページ: 351 - 388
10.2969/jmsj/83468346