研究実績の概要 |
最終年度にあたる令和4年度は,多元接続通信符号の一種である代数的改ざん検出符号(AMD符号)について,前年度までに得られていたシミュレーション結果の理論的裏付けを試みた.AMD符号が,事前知識をもたないためにランダムな攻撃を行うことになる敵にとっての最大改ざん成功確率を最小にするという意味で最適(R-最適という)となるための必要条件の十分性について,シミュレーションプログラムの再検証を行ったのち,符号語サイズが4, 6, 14のときには必要条件が十分となることを確認した.これを踏まえ,符号語サイズ4の場合について,AMD符号がR-最適となるための必要条件を乗法的指標で表し,ヤコビ和に落とし込めそうであることまでは見通せたが,まだ証明の完結には至っていない状況である. 本研究課題では,多元接続通信符号の組合せ構造として現れる最大独立集合問題および支配集合問題を解明し,その結果から逆に多元接続通信符号の理論的構成法を与えることを目指したが,後者に研究期間のほとんどを費やすこととなった. 本研究課題により,光直交符号などの多元接続通信符号と同じく,自己相関が最小となる2進系列(完全2進系列という)から,n=2 (mod 4)のときに,推定したいパラメータの分散を最小にするという意味で最適な(D-最適な)2水準の巡回準直交配列の構成法を示せたことは,今後アダマール行列が存在しないパラメータnで,アダマール行列に近い性質をもつ行列の構成法を与える糸口となる結果を得たと言える.また,AMD符号がR-最適となるための必要条件を導出し,それが同時に十分性も満たす場合が確認できたことは,今後必要十分条件を解明する足掛かりとなるはずである.
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