研究課題/領域番号 |
20K03717
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
渕野 昌 神戸大学, システム情報学研究科, 名誉教授 (30292098)
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研究分担者 |
酒井 拓史 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (70468239)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Laver genericity / Laver genericity の定義可能性 / Loewenheim-Skolem 定理の拡張 / 絶対性 / 反映原理 / 定常性の反映原理 / Hamburger 問題 / Galvin 仮説 |
研究実績の概要 |
Laver-generically large cardinal(s) の存在を主張する公理群に関する,昨年度の研究を更に発展させた成果についての論文一編が出版された. Chain condition を満たす poset での generric extension に関する Laver-generically large cardinal の存在を仮定すると,これは weakly Mahlo など大きな基数となり,連続体は,この基数より大きいか等しいものとなる.このような状況で起こっていることの検証を進め,それに関する結果の一部は RIMS 講究録で発表された.残りの結果は研究分担者 酒井拓史との共著として,今年度のワークショップのRIMS 講究録に収録予定で,これらの研究を更に発展させたものを,査読つきの国際誌に投稿予定である. 昨年度の研究で,Laver-generically large cardinal の存在公理の定義可能性の如何が未解決であることが判明していたのだが,これについては,extender のバリエーションと見做せる generically elementary extension の構成法を導入することで,肯定的な解決を得ることができた.この結果を纏めた論文は現在投稿中で,2022年 6月までにレフェリーレポートが返ってくることとなっているが,preprint は arXiv で公表されており,この結果は,2021年9月にフランスの Luminy での国際学会 (hybrid) 等でも発表している. 昨年度に続き,Covid-19 の感染状況のため in person な学会参加や研究打合せは行えていないが,日本やヨーロッパの複数のzoom でのセミナーや学会で,本研究での研究結果や,関連研究の研究成果についての発表/研究打ち合わせを行なっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の研究において,前年度の研究の進捗状況の報告でも未解決の重要な課題である,という位置づけを与えていた Laver-generically large cardinal の存在公理の定義可能性の問題に,肯定的な解を与えることができた. この結果により,Laver-generically large cardinal の存在公理が,メタ原理ではなく,集合論の言語で (一つの論理式により) 定式化できる原理であることがわかったことになる.このことは,本研究の基本指針が,集合論研究の中心課題と深く関わるものとなっていることの再確認を与えるものでもある.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究により,Laver generic large cardinal の定義可能性から,この概念が,ZFC の枠組みでの "正しい" 概念であることが示せたので,この概念についての,考察を更に進める. 現段階で,次にアプローチすべき課題と考えられるものには.κ が, Laver generic large cardinal であるとき,universe の強制拡大で,κ のこの性質がどれだけ保存できるか,hugeness などの非常に大きな巨大基数の性質に関する Laver genericity が,supercompactness の Laver genericity に比べて集合論上座りの良い概念となっていることを示唆する定理がないか,逆に,supercompactness がこの枠組みで妥当な巨大基数となっていることを示唆する定理はないか,など,集合論の根本的な問題と直結しているように思える課題や,Hamburger 問題,Galvin 仮説などの問題への応用の可能性の探究,等が考えられる. Organizatorially には,Covid-19 の感染状況により,科研費を旅費として使用できないでいたので,次年度以降に Covid-19の状況を見極めた上で,集合論,ないし集合論とモデル理論の国際ワークショップを開催し,本研究や,関連する研究の協力体制の強化や知見の共有を図りたいと思っている.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の発生は,Covid-19 の感染状況への対応のためと,購入予定だった電子機器の感染状況からの納品の遅れの状況のため年度内に購入できなかったためである.繰越の使用額については,電子機器 (タブレット,入出力機器等) の繰越年度での購入の費用,および,今後の Covid-19 の感染状況を見極めて,関連研究の国際研究ワークショップの開催の費用にあてる予定である.
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