研究課題/領域番号 |
20K03720
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
千葉 周也 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (80579764)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 有向道分割 / 有向閉路詰込み / ハミルトン閉路 / 次数条件 / 禁止部分グラフ条件 |
研究実績の概要 |
(1) 指定された本数からなる指定された長さの有向道分割に対する次数条件 無向二部グラフ上の逐次区間交換論法や部屋割り論法の利用法を改良することにより、2018年のChiba-Yamashitaによる「指定された本数からなる道分割」に対する次数条件の結果を、「指定された本数からなる指定された長さの有向道分割」に対する次数条件の結果へと拡張することに成功した。この研究成果は、上記の論法が有向グラフ上の閉路分割・道分割問題に対する効果的なアプローチになり得ることを示すため、本研究課題に対する新たな知見を見出したといえる。また、本研究成果は学術雑誌(Discrete Math, 2020)に掲載された。 (2) 指定された個数からなる指定された長さの有向閉路詰込みに対する次数条件 (1)における論法の他の類似問題への適用性を調べるために、2018年のChiba-Yamashitaによる「指定された個数からなる有向三角形・有向四角形詰込み」に対する次数条件の結果を、「指定された個数からなる長さが奇数の有向閉路詰込み」に対する次数条件の結果へと改良する(証明)方針を定めた。 (3) ハミルトン閉路に対する禁止部分グラフ条件 有向グラフ上の詰込み・分割問題に対する禁止部分有向グラフ条件について考察するために、無向グラフ上の既存の研究成果の精査を行なった。特に、1999年のBrousekらによる「ハミルトン閉路」に対する禁止部分グラフ条件の結果(Discrete Math, 1999)と、Faudreeらによる「閉路分割」に対する禁止部分グラフ条件の結果(Discrete Math, 2008)の共通の一般化を与えることに成功した。本研究成果は学術雑誌(Discrete Math, 2021)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 無向二部グラフ上において「逐次区間交換論法」と「部屋割り論法」を組み合わせることにより、「指定された個数からなる有向閉路分割」や「指定された本数からなる指定された長さの有向道分割」に対する最良の次数条件が導かれることが明らかになったので、有向グラフ上の分割問題に対する新手法の理論的枠組みの構築に対する重要な知見が得られたといえる。また、「指定された個数からなる長さが奇数の有向閉路詰込み」に対する最良の次数条件を導く可能性をも見出すことができたので、有向グラフ上の詰込み問題に対する手法の確立へと繋がることも期待できる。
(2) 有向グラフ上の詰込み・分割問題に対する禁止部分有向グラフ条件について考察することにより、与えられた有向グラフの基礎グラフに対する禁止部分グラフ条件と、向き付けに対する禁止条件を組み合わせることで、無向グラフ上の結果を有向グラフ上の結果へと拡張できる可能性を見出すことができた。これによって、次数条件以外の十分条件に対する手法の枠組みを構築することも期待できる。
以上のことから、2020年度に得られた研究成果は本研究課題の解決およびその発展に繋がるものだと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 現在までに得られた研究成果の証明法をさらに精査するために引き続き他の類似問題について考察する。特に、詰込みや分割の対象となるグラフの族を特定の制約を与えた閉路,道および木に焦点を当て、それぞれの存在性を保証するための条件や証明法の差を明らかにすることで、包括的な枠組みを構築するためのデータを収集する。
(2) 詰込み・分割問題に対する次数条件以外の十分条件の考察の割合を増やすことで、より汎用性の高い手法を確立することを目指す。特に、2020年度に考察した禁止部分有向グラフ条件に焦点を当て、次数条件を考察した場合からどのような変化が生じるのかを明らかにし、要求する詰込みや分割ごとの差を整理する。
(3) 2020年度に得られた研究成果のうち未発表のものに関しては、2021年度中に論文としてまとめ挙げ、その成果を学術雑誌や国際・国内会議を通して世に発信する。さらに、学会・研究集会等に積極的に参加する(遠隔参加も含む)ことで、他研究者と最新の研究情報の交換を行い、本研究課題の問題点・研究方針について議論する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、2020年度に参加を予定していた学会・研究集会の中止ならびに他研究者との研究打ち合わせの出張を見送ったため。
使用計画:対面による開催が予定されている学会・研究集会に参加するための旅費や、遠隔で学会・研究集会に参加するための準備に対する設備備品(PC・モニタ等)の費用の一部として使用する。
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