研究実績の概要 |
q 元体(q 個の元から成る有限体)F_q 上の長さ(符号長) n, 次元 k, 最小重み d の線形符号([n,k,d]q 符号)が存在する限界を決定する問題は、符号理論において最も基本的な研究課題の一つであり、最適線形符号問題(Optimal Linear Codes Problem)と呼ばれる。符号の誤り訂正限界を求めるには、[n,k,d]q 符号が存在するような最小重み d の最大値 d_q(k,d) を求めれば良いが、これは [n,k,d]q 符号が存在するような長さ n の最小値 n_q(k,d) を求める問題と等価である。線形符号が拡張可能であるための条件を射影幾何の手法を用いて新たに求め、その研究によって得られた知見を活用して最適な線形符号がもつ長さの最小値を確定したり、まだ発見されていない最適な線形符号のコンピュータによる探索や構造解析等を通して、最適線形符号問題の解決を目指すのが本研究の主目的である。 本年度は、主に3元体上の線形符号と q元体上の4次元線形符号の最適線形符号問題(n_3(k,d) と n_q(4,d) の決定問題)について取り組み、最小重み d が 9 を法として -2 である場合の新たな拡張定理を適用した3元線形符号の非存在証明や、符号語の重みが 16 を法として4種類しかない場合の新たな拡張定理を求めた。3元線形符号については、Griesmer 限界に達する符号が存在しないような最小重み d の最大値を求める問題にも取り組み、我々が提起した予想式について、9次元まで正しいことを証明することができた。これらの成果については、それぞれ国際学術雑誌に発表した。更に、一般の有限体上の5次元線形符号の存在限界について、韓国の研究者と共同研究を開始し、2月に招聘して今後の研究の方向性について打合せを行った。
|
今後の研究の推進方策 |
有限体上の線形符号に対する最適線形符号問題については、q = 8,9 などで n_q(k,d) の値が未決定な場合の検討を行う。また、Griesmer 限界に達する5次元線形符号の非存在性についても調べたい。特に、線形符号の非存在性証明に応用できるような、線形符号の拡張可能性に関連する様々な条件も検討したい。新たな最適線形符号のコンピュータを用いた探索や構造解析も、引き続き大学院生と共に行う予定。 未解決問題を含む低次元の n_q(k,d) の表は website で公開しており、随時更新する予定である。
|