研究実績の概要 |
令和2年度は本研究の中心的課題である同時操作不可能性の構造について、2つの異なる側面から迫る研究を行った。一つは、量子的な参照系(quantum reference frame)の問題について、不確定性関係を含んだ同時操作不可能性の視点から限界を求めるというものである。量子的な参照系が与えられたときに、どのような操作がどこまで可能かという問題については、これまでは物理量を扱った場合のみが扱われていた(Approximating relational observables by absolute quantities: a quantum accuracy-size trade-off, P Busch, LD Loveridge, T Miyadera - Journal of Physics A: Mathematical and Theoretical, 2016)。令和2年度には、この研究を量子チャネルへと拡張することに成功した(A quantum reference frame size-accuracy trade-off for quantum channels, T Miyadera, L Loveridge - Journal of Physics: Conference Series, 2020)。また、同時操作不可能性の定義に関わる問題として、この定義が全ての状態についての不可能性として規定されており、その実験的検証は一見すると不可能であることがあった。この根本的問題に対して考察を行い、同時操作不可能性を検証するのに必要な状態の個数をあらわす量について定式化を行い、新しい指標(同時操作不可能性次元・同時操作可能性次元)を導入した。本指標は、これまでの同時操作不可能性に関する他の指標とは異なり、自然数を値にとり、さらに単純なnoisyな量子ビットに関する二値の物理量についても、そのnoiseに応じて異なる値を取ることがわかってきている。本研究は、令和3年度の初旬に公開予定である。
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