研究課題/領域番号 |
20K03734
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
中田 行彦 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (30741061)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 時間遅れをもつ微分方程式 / 周期解 / 安定性 / ダイナミクス / ハミルトン系 |
研究実績の概要 |
本研究では、分布型の時間遅れをもつ微分方程式の周期解について研究を行った。時間遅れをもつ微分方程式の定性的な性質は、古くから研究されてきたが、現在においても、時間遅れと方程式の非線形性の交錯によって現れるダイナミクスに関する結果は限定的である。特に、周期解の存在性や安定性は今でも困難な課題である。 本研究では、申請者の先行研究において発見された、ヤコビの楕円関数を用いて明示的に表される周期解をもつ時間遅れ微分方程式の例を糸口として、 広いクラスの時間遅れをもつ微分方程式の周期解の存在性・安定性を考察した。申請者は、適当なフィードバック条件を満たす奇関数による非線形性をもつ分布型の時間遅れ微分方程式のある対称的な周期解の存在性を、対応するハミルトン系常微分方程式の周期解の存在性と関連づけた。また適当な変数変換によって、方程式に対して、周期解の族を構成出来ることを明らかにした。現在、本研究結果を、現在論文に纏めている。 また、申請者は、共同研究者のGabriella Vas氏(ハンガリー)と、階段関数による非線形性をもつ分布型の時間遅れ微分方程式の解析を行っている。この方程式に対しては、容易ではないが、解を逐次的に計算することが可能である。この研究から、周期解の安定性をはじめとして、分布型の時間遅れをもつ微分方程式のダイナミクスについて示唆を得ることを期待している。 本研究による考察や、先行研究から、あるクラスの時間遅れをもつ微分方程式は、ハミルトン系常微分方程式と関連し、その関係性はまだ限定的に明らかになっている状況であると考えられる。本研究によって、その関係性を詳しく調べ、あるクラスの時間遅れをもつ微分方程式の周期解について知見を得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究提案を行った分布型の時間遅れをもつ微分方程式に対して、いくつかの結果を得ることが出来た。研究期間を通して、当初の証明のアイデアを、先行研究を調べながら、精密に具現化出来ている。また本研究で着目している周期解がもつ対称性について、以前より明らかにすることが出来た。さらに、本研究期間において、離散型の時間遅れをもつ微分方程式に対して、変分法を用いて、周期解の存在を示す論文を見つけることが出来た。この手法は、本研究で着目しているクラスの微分方程式にも応用可能であると考えられ、これを調べることによって、ハミルトン系常微分方程式との関連をさらに明らかに出来るのではと期待している。これらのことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ある一般的な分布型時間遅れをもつ非線形微分方程式の周期解の存在性について結果を得ており、本結果について論文をまとめることを目標としている。また周期解の安定性について示唆を得るために、ホップ分岐解析や周期解のフロケ乗数の計算について先行研究を調べている。 あるクラスの離散型の時間遅れをもつ微分方程式の周期解はハミルトン系常微分方程式の周期解と関連づけられる。このような方程式に対して、うまく汎関数を構成して、変分法によって、周期解を見つける先行研究があり、このような手法を分布型時間遅れをもつ非線形微分方程式に応用できないか検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型感染症流行のため、予定していた国内出張や海外出張が不可能となった。今後状況が許せば、今後国内出張を計画し、研究議論や打ち合わせの機会を創出したいと考えている。
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