研究課題/領域番号 |
20K03737
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
石村 直之 中央大学, 商学部, 教授 (80212934)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 破産確率 / 積分方程式 / 数値解法 / コピュラ(接合関数) / Value at Risk |
研究実績の概要 |
リスク理論において破産確率の解析は重要な課題となっているが,今年度の主要な成果は,その破産確率に関するものである。破産確率が満たすべき方程式は,第2種Volterra型の積分方程式となることが知られているが,その積分方程式の数値解法に関して新たな手法により成果を得た。より詳しくは,積分方程式の積分区間は無限となる可能性があるため,数値解法においては何らかの有限近似を行う必要がある。ただしその近似方法は,理論というよりはむしろ暗黙のノウハウの面がある。我々の手法は,無限区間を有限区間に変換することで,その暗黙知を必要としないものである。その変換された方程式にスペクトル法を適用すれば,精度の高い計算が可能となる。実際の数値計算でもその精度が確かめられた。これは同志社大学の今井仁司教授と帝京大学の五月女仁子教授との共同研究である。2022年8月のエストニアでの保険数理に関する国際会議で発表し好評を得た。2022年10月の奈良での国際会議でも発表した。また,2023年3月のシンガポールでの数学と物理学の国際会議で主講演のひとつを務めた。雑誌と国際会議の報告集に論文を掲載した。 他の研究課題では,多変数ポートフォリオ問題に対するコピュラを伴うValue at Risk (VaR)の研究においては,投稿していた主論文の改訂を行い再投稿となった。現時点では査読者の意見は好意的であり,最終的な出版まで引き続き努力する。また,所属する機関の紀要に解説論文を,実証部分はデータを改めて計算しなおして寄稿した。これはコロンビアからの日本政府国費留学生として博士学位を得たAndres Mauricio Molina Barreto 博士との共同研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対面での国際会議も多くは復活し,この分野での研究の盛んなヨーロッパでの国際会議に参加し発表を行うことができた。2年振りの対面開催であったためか,出席者全体の意識も高く,大変有意義な議論を行うことができた。そのため,我々の研究における優位な点とともに課題も明らかになった。次に進むべき方向性も明確になったため,研究は総じて順調に推移していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
破産確率の数値解法においては,基本となる分布関数によって難易度が異なってくる。この内容では,今年度はある程度の仕上げとなる成果を得て,論文としてまとめ,権威のある雑誌への投稿を目指したい。そのためには,引き続き共同研究者との打ち合わせ,特に同志社大学の今井仁司教授との打ち合わせは必要であり,また該当する国際会議での発表は重要な方策である。現在のところは,9月にタイ国で行われる国際会議での発表を目指して準備中である。 その前の2023年8月には,早稲田大学において応用数理の国際連合の会議であるICIAM2023が開催される予定である。我々は,Financial Modeling というオーガナイズドセッションを主宰する。そこでの議論も研究への推進力となろう。場合によっては,この経費により何人かの援助を行うことを想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型感染症により当該年度というよりは前年度の未使用額がそのまま当該年度に影響を与えたためである。当該年度は,諸経費の高騰によりむしろ予定通りの使用がなされた。今年度は最終年度であり,8月に大きな国際会議も予定されているため,また,引き続き出張費用の高騰が見込まれるため,余裕をもった使用計画となっているのではないかと考えられる。
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