研究課題/領域番号 |
20K03740
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
米田 元 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90277848)
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研究分担者 |
土屋 拓也 八戸工業大学, 基礎教育研究センター, 准教授 (50632139)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 相対性理論 / 高精度数値計算 |
研究実績の概要 |
Einstein方程式は拘束条件を付帯した連立の非線形双曲型偏微分方程式で、数値計算により解を求める際には、拘束条件が破れやすい。そのため、様々な数値計算手法が提案され実装されてきている。本研究では拘束条件を満たすように、拘束条件の時間発展方程式に着目し、数値計算の安定化を実装している。昨年度の研究に続いて今年度では、物質場の存在する重力崩壊現象を対象として、高精度数値計算の実装を行い、拘束条件の改善と数値計算の延命への改善が見られた。また、物質場の存在する場合には初期値の勾配が急な場合もあり、数値誤差が蓄積しやすく、数値解の精度が悪くなりやすい。そのため、高精度な数値計算を行うにあたり、精度の悪くなりやすい箇所の分割を細かくするなどの技術に長けた有限要素法による高精度計算の実装を考えた。今年度は、主に双曲型偏微分方程式に対する有限要素法を用いた高精度な数値計算の実装を始め、1次元の簡単な問題においては、高精度な結果が実現できている。
国内発表では計7件を行い、国際発表では1件行った。また、論文「Numerical simulations of semi-linear Klein-Gordon equations in the de Sitter spacetime with structure preserving scheme」 Takuya Tsuchiya, Makoto Nakamura(arXiv:2203.09074)、「Stable numerical simulation of Einstein equations in gravitational collapse space-time」Takuya Tsuchiya, Ryosuke Urakawa, Gen Yoneda(arXiv:2203.05149)の2件が投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Einstein方程式の構造保存型数値計算を実現するには、(A)数値計算における精度の基準の決定、(B)高精度を実現する構造の理解、(C)その実装、が必要となる。(A)に関しては、Einstein方程式が拘束条件を付帯していることから、拘束条件の値を精度であるとみなし、拘束条件を満たすように数値計算が実現できればよいことがわかる。また、(B)に関しては、拘束条件の時間発展方程式から、高精度な数値計算の実装の方向性が決定できる。以上を実現するための(C)に関して、双曲型偏微分方程式における構造保存型数値計算の例としてKlein-Gordon方程式を対象とすることで、その要因が判別してきており、結果も論文にまとめて投稿中である。また、Einstein方程式に物質場の入った数値計算の実装を行うことで具体的な計算モデルへの適用も試みており、その結果も論文で投稿中である。以上のことから、当初の目的であるEinstein方程式の構造保存型数値計算の実現に向けて成果がまとめられつつあるためである。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の方策は、Einstein方程式の高精度な数値計算を可能とする方程式系の構築と、その具体的な計算モデルへの適用である。Einstein方程式の数値計算においては、より強く双曲型に式変形したうえで共変性を持つようにした汎用性も高い発展方程式系が提案されており、こちらについても実装をしている途中である。これを論文にまとめることと、具体的な計算モデルへの適用を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で,成果発表,調査の出張が予定通り出来なかったので。
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