本研究では数値誤差を蓄積しやすい構造をもつEinstein方程式に対し、安定かつ精度の良い数値解を得ることを一つの目的としている。このため、数値誤差の主要因となる離散化における誤差を減少させることを目的として、方程式に特化した離散化手法の構築を目的とし、昨年度は離散化された方程式において数値安定性や精度の良い条件の指標を提案した。 最終年度は、ここまでの成果がどの程度数値結果に安定性と精度の改善に効果的であるかを調べるために、重力崩壊現象を対象として数値計算を行った。主な成果としては、(A) 重力崩壊現象の最も頻繁に行われる方程式系である共変的BSSN形式に対して、固有値解析による数値安定性を調べ、さらにより安定性の高い方程式系を提案、(B) 完全流体を仮定して重力崩壊現象を数値計算し、さらに固有値解析の観点から完全流体方程式を修正することで、精度の良い数値結果を得た。これらの成果に加え、Einstein方程式が双曲型に分類されることから (C) 離散化誤差の主要因と考えられる2階の空間微分項の離散化手法に対して、詳細に調査した。 論文の成果として、(A)については``On the stability of covariant BSSN formulation''を投稿し受理され、(B)については``Stable numerical simulation of Einstein equations in gravitational collapse space--time''を前年度投稿し最終年度に受理、(C)については``Numerical accuracy and stability of semilinear Klein--Gordon equation in de Sitter spacetime''を投稿し受理された。また、学会等での発表は5件行った。
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